Difference

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「……やめる気ないだろ?おまえ」 「…だって…、それ、高かった…」 「こんなもの買うためにヘルスやってんのか?馬鹿だろ?」 俺はトモの手を払って、ピルケースの中にあった葉巻のようなものをちぎっていく。 細かくちぎって、机の上から床へとゴミとして落とす。 「家には?その鞄の中には?まだあるのか?」 トモは泣きそうな顔を見せて鞄を抱いて。 俺は鞄を取り上げて、中を開ける。 メイク道具や鏡、生理用品入れたポーチ。 ポーチの中に隠していやがった。 即廃棄。 何も言わずに俺に廃棄させたトモの頭を撫でてやって。 その意思があるのならと、俺はトモにその夜の時間、つきあってやる。 チカのバイトが終わった時間も過ぎて。 携帯を見て確認してみても、チカからはなんの連絡もない。 俺が声をかけなければ、俺が電話をしなければ、チカと会うことはないのだろう。 「コウ、クスリやめたらつきあって?」 「それ、何度目?やめてから言え。そして俺には今はまだ彼女がいる」 「早く別れてよ。…セフレでもいいよ?コウんちいきたい。コウに抱かれてみたい」 求められている。 誘われている。 チカとはまったく違う言葉で。 トモの意思を見せて。 する?なんて…卑怯だなと思う。 なんで求めさせられてばかり? おまえは?って聞いても、何も答えない。 恥ずかしそうにしてくれたなら、言えないだけなんだと思うけど。 チカは逆に怒ってくることがある。 聞いてやったのに、と。 そんなの……うれしくない。 求められることを求めるなんて…、馬鹿みたいだ。 欲しいものはないから、求めないだけだろ? 「コウ?」 声をかけられて、俺は意識を目の前のトモへと戻した。 「つきあってる女としかしたくないから。セフレはいらない」 「真面目すぎ。でもそんなコウが好き。つきあったら私だけに尽くしてくれそう。なんでコウがフラれるのか、私わかんないよ。私は絶対フラない。 なんにもしないから添い寝して?手を握ってくれているだけでいいから」 トモのクスリの常習は嫌だけど。 そう言われて喜ばない男はそうはいないだろう。 同じことをチカが言ってくれたなら…なんて、あり得ないことを考えて。 俺はトモに俺の時間をくれてやる。 チカは俺の携帯を鳴らさない。 そんなに……どうでもいいのか?なんて、一人で拗ねてみる。
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