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仕事が終わると、飯を食って帰って、チカのバイトが終わる時間まで外に出て時間を潰す。
俺が…言ってやらないと。
チカからは言い出すこともないだろう。
けど…、でも…。
片寄った俺の中の気持ちがそれを嫌がっている。
それでも…。
チカはすべて俺任せだから。
俺が言わないと、行動しないと、何も変わらない。
連れと笑いあってる気分にもなれず、俺は酒を軽く飲みながら、一人でビリヤードをして時間を潰した。
なるべく何も考え込まないように。
別のことに意識を集中していられるように。
店内で隆太がバイトしているけど、俺がひたすら玉を突いていて、他に客がいれば隆太も仕事ばかりしている。
チカのバイトが終わる時間に合わせて清算。
ほとんど無料で遊ばせてもらっているけど、たまには支払ってる。
「チカちゃんのお迎えにでもいくのか?」
隆太は俺をからかうように言ってくれる。
「バイト先知らない」
「…家も知らないとか言いそうだな」
「知らなくて悪かったな。……つきあってなかったのかもな」
「また友達でいましょうと言われそうなパターンなのか?おまえ、それ、いい人やりすぎているからだって言ってやってるだろ。都合のいい男やりすぎ」
「チカは俺に何も求めないから、そんなのにはなってない。俺がチカを都合のいい女にしてるだけ」
「…ないな。おまえ、自己中にも思えるときあるけど、女をそういうふうに扱える奴じゃない。何かあったのか?」
隆太は俺をわかったように言って、更に気にかけた言葉なんて言ってくれて。
「おまえは俺の保護者か。俺のこと気にしていないで、さっさと彼女でもつくりやがれ」
「おまえに奪われるから嫌だ」
「おまえとは違って、それはあっちからくるんだろうが。おまえは俺の女になった女に自分から近づいて落としてるだろ」
「落としてない」
隆太はいつものように言い張って、俺が蹴りでもいれて認めさせてやろうとすると、隆太はかわす。
反撃のように隆太の足が俺を狙ってきて、俺はその足をかわして、また蹴って。
お互いに絶対に当たってやらない蹴りあいになる。
疲れるまでやって、俺は何をやっているんだと自分に呆れて溜め息をついて。
隆太に軽く手を振って、家に帰るように歩き出す。
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