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チカはずっと黙ったままで。
外にいるのか、車道を走る車の音だけが聞こえてくる。
「チカ?」
少し心配になって声をかけた。
夜中だし、一人で外にいるし、肌見せまくりの服を着ているようだし。
変な輩にでも襲われたらと心配になる。
『……ねぇ、晃佑。私、まだ晃佑の彼女?』
チカは俺の声にやっと反応したかのように聞いた。
その質問はできれば今は聞きたくない。
最後に…でも、会いたいと思ったから、ふれたいと思ったから、会うことを望んでいるのに。
「…なんで?」
『……なんで電話してくれないの?私のこと放置?』
チカは俺が言ったことをそのまま言った。
……ずるい女だ。
俺が冷めたかのように思ってくれているらしい。
なぁ?おまえは?
俺に電話もメールもおまえからしてきたことないだろ?
…泣きそうだ。
「彼女。今、どこだよ?行くから。そこで待ってろ」
俺は言ってやって、部屋を出ようと鍵を手にして。
『……ねぇ?いつも呼ぶばかりだったのに、どうして今日はそんなふうに言うの?どんなに遅い時間に帰ることになっても、送ってくれなかったよ?ナンパを気にするなんておかしいよ』
「だから…」
すべてに言い訳のような理由をつけることが可能だ。
おまえがいつも俺に家を教えなかった。
俺がいくと言えばおまえはくると言った。
俺に呼び寄せているつもりはない。
遅い時間に帰ると言って送らなかったのは確かにあった。
俺は泊まっていけばいいと言って、おまえが帰ると言って、喧嘩になっておまえは一人で帰った。
その後に俺はメールを入れている。
自分の彼女がナンパされるのを気にするのは、俺にとって普通だ。
お互いになすりつけあいの喧嘩になりそうで。
俺は言いたい言葉を飲み込んだ。
「……なに?何が言いたい?」
『なんで今日は優しいの?…何かあった?』
つまりは俺が疑われているらしい。
俺が優しくするのは、チカにとってめずらしいことらしい。
チカは俺のこと、なんにも見てもくれていない。
そして俺を疑っているとは言わずに、またどこか保身だ。
俺が悪い?
このつきあいは、全部、俺が悪い?
つきあいたいと俺が望んだのが悪かった?
おまえに惚れられたいと望んだのが悪かった?
俺は…おまえを傷つけてばかりだった?
俺が今、傷ついてるけど?
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