Dual

4/16

584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
チカはずっと黙ったままで。 外にいるのか、車道を走る車の音だけが聞こえてくる。 「チカ?」 少し心配になって声をかけた。 夜中だし、一人で外にいるし、肌見せまくりの服を着ているようだし。 変な輩にでも襲われたらと心配になる。 『……ねぇ、晃佑。私、まだ晃佑の彼女?』 チカは俺の声にやっと反応したかのように聞いた。 その質問はできれば今は聞きたくない。 最後に…でも、会いたいと思ったから、ふれたいと思ったから、会うことを望んでいるのに。 「…なんで?」 『……なんで電話してくれないの?私のこと放置?』 チカは俺が言ったことをそのまま言った。 ……ずるい女だ。 俺が冷めたかのように思ってくれているらしい。 なぁ?おまえは? 俺に電話もメールもおまえからしてきたことないだろ? …泣きそうだ。 「彼女。今、どこだよ?行くから。そこで待ってろ」 俺は言ってやって、部屋を出ようと鍵を手にして。 『……ねぇ?いつも呼ぶばかりだったのに、どうして今日はそんなふうに言うの?どんなに遅い時間に帰ることになっても、送ってくれなかったよ?ナンパを気にするなんておかしいよ』 「だから…」 すべてに言い訳のような理由をつけることが可能だ。 おまえがいつも俺に家を教えなかった。 俺がいくと言えばおまえはくると言った。 俺に呼び寄せているつもりはない。 遅い時間に帰ると言って送らなかったのは確かにあった。 俺は泊まっていけばいいと言って、おまえが帰ると言って、喧嘩になっておまえは一人で帰った。 その後に俺はメールを入れている。 自分の彼女がナンパされるのを気にするのは、俺にとって普通だ。 お互いになすりつけあいの喧嘩になりそうで。 俺は言いたい言葉を飲み込んだ。 「……なに?何が言いたい?」 『なんで今日は優しいの?…何かあった?』 つまりは俺が疑われているらしい。 俺が優しくするのは、チカにとってめずらしいことらしい。 チカは俺のこと、なんにも見てもくれていない。 そして俺を疑っているとは言わずに、またどこか保身だ。 俺が悪い? このつきあいは、全部、俺が悪い? つきあいたいと俺が望んだのが悪かった? おまえに惚れられたいと望んだのが悪かった? 俺は…おまえを傷つけてばかりだった? 俺が今、傷ついてるけど?
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加