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嘘でもいいから、愛されていると思いたかった。
俺は求めてばかりで、きっとおまえに甘えすぎていた。
同じものを返して欲しくて…、甘えて…いたのかもしれない。
「……確かめていたいだけ。おまえが俺に惚れてるって。だからつきあってるんだって。
だっておまえ、俺に好きだって一度も言ったことないだろ?
俺に何かを求めることもないし、俺の連れの中には入ってこようとしないし。
俺が言い出したことだけど、おまえが俺とつきあっていたいって意思を見せてくれたことあるか?」
今、まだ続けていたいと引き留めてくれるのなら。
おまえの気持ちを俺にくれたなら。
なんて。
また甘えたことを思って、俺は何も言えなくなった。
わかってる。
おまえが俺に言った。
今の俺では誰とつきあっても同じだと。
同じことを繰り返してきた。
だから、おまえの言うとおりなんだろう。
俺は遊びの恋愛にしかできない、その程度の男。
つきあってもただの友達で終わる、長い恋愛にもならない、恋愛感情も持てないような男。
引き留める言葉がチカから出るはずもない。
長い沈黙だった。
終わりはやっぱり俺から伝えなければいけないらしい。
俺が別れたいと思っているわけでもないのに。
「……俺は…、地味なおまえでもよかった。
…高校の頃、俺、おまえに醜態晒しまくりだったの覚えてる?授業中眠って、机に思いきり頭ぶつけて起きたら、おまえ笑ってたり。食堂で連れに足を引っかけられて持っていたものぶちまけたの見られたり。
あの頃つきあっていた彼女に階段突き落とされたの見られたり。…恥ずかしくて逃げたけど、声かけてくれたよな?
話したこともなかったけど、目、よく合った気がする。だから名前、覚えてた。メガネの印象だったから、顔、すぐには思い出せなかったけど。
……最初から俺はおまえに興味あったよ。酔っていた間の記憶もなくて、また醜態晒したんじゃないかって思いながら、また会いたくて…」
俺がひたすらおまえに電話をして…。
ただの妥協だったとも言われたくない。
そのまま俺にその本音は見せないでくれ。
「もう…いいよ。
俺に無理につきあってくれなくても。
今までごめん。ありがとう。…バイバイ」
俺はチカに返事を求めることもなく、携帯から耳を離して、その通話終了ボタンを押した。
一言言い忘れてた。
愛してた。
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