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別れて泣いたのは初めてだった気がする。
俺はどこまでもチカに甘えているのかもしれない。
本能だけで生きられたのなら、何を考えるでもなく、俺の望むままに、チカとつきあっていたのに。
精神安定剤にぶっ壊されて、俺はまた浅い眠りを繰り返す。
夢の中、チカと思って声をかけると、振り返ったのはミクだった。
「コウちゃん、私のかわりにチカとつきあっていただけでしょ?なんでそんなに落ち込んでるの?」
かわり…と言えばかわりなのだろう。
ミクに別れを告げられてあいた穴を埋めるように、チカを求めたのだから。
けど、それを言うなら、俺の恋愛すべて、ずっとかわりを求めてきたようなもので。
ミクもその前に別れた女のかわりだ。
「毛色の違うモノに手を出したりするから変なフラれ方するんじゃない。コウちゃんは恋愛ごっこを楽しくやらせてくれる人なんだから。恋愛ごっこもできない女とは相性悪いんだよ」
恋愛ごっこ?
「結婚するわけでもないんだから。恋愛なんて遊びでしょ?楽しくなければ遊びにもならない。遊べない女はコウちゃんに最初から似合ってなかったんだよ」
遊び…?
俺は…いつも、どの女とつきあっても、愛されることを望んだ。
勘違いでもいいから、愛されているといつも感じていたかった。
遊びなのか?
おまえは遊びだったと思う。
俺も遊びだった?
「本当、精神弱いよね。誰にでもすぐになつく寂しがり屋。だからフラれるんだよ。男として頼りない。リュウちゃんのほうが頼りがいあってかっこいい。コウちゃんって、本当に見た目だけだよね。連れて歩くのはいいけど、本気になられるとウザい」
胸をどんどん突き刺してくれる。
俺はそこから逃れたくて、意識を夢から覚めるように戻そうとして。
「自覚あるよね。コウちゃんは遊べる男でいればいいんだよ。セフレつくって遊びまくっていたほうが魅力あるよ」
俺はそんなミクの言葉を聞きながら、体を無理矢理起こした。
真っ暗な闇が目の前に広がる。
掴まるように、ベッドのシーツを握って。
乱れた鼓動を落ち着けさせる。
俺は夢の中で何をミクに言わせているのだろう?
なんて思って、顎まで垂れた雫に気がついて。
俺は腕で目元を拭う。
俺は恋愛には向いていない男なんだろう。
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