Dual

13/16

584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
俺の連れはいろんなところにいる。 職場関係、遊び関係、学校関係、地元関係。 遊びの中でもどこで知り合ったかで、またいろいろいて。 俺の連れだからと全員が顔見知りというわけでもない。 隆太は学校と地元の連れで、一番長いつきあいがあると思う。 長いつきあいはあっても、俺の遊びの連れを全員把握しているわけでもない。 それでも俺が隆太を連れ回しているときに遊び関係の誰かに会って、一緒に遊ぶことになって知り合うこともある。 まぁ、そんな感じで、顔は知っているけど、同じ店にはいるけど、いくつかのグループに別れている。 「コウ、来てたんだ?」 なんてうれしそうな声をあげて、トモが俺の背中から抱きついてきた。 オッサンがいきそうな店を回って遊んでいたから、ここには久しぶりにきた。 「トモ、たまには遠慮すれば?コウがいるとすぐに近づいてくるんだから」 俺が話していたグループの女はどこかトモを咎める。 「モテまくりだな、コウ」 とグループの男にはからかうかのように言われる。 うん、まぁ、ここにくると誰かしら構ってくれる。 構ってと言わなくても声をかけてくるから、一人でここにきても一人にはなれない。 確かにある意味モテまくりだ。 「コウがモテる秘訣を教えてもらいたい」 そんなの知らない。 誰にでも声をかけていると連れが増えただけだ。 「優しくてかっこいいもん。コウ、彼女と別れたんだからつきあってくれればいいのに」 トモは相変わらずのように言ってくれる。 俺はそのつきあうという言葉から逃れるように、流すように、何も答えてやらなかった。 「自己中だよ。…でもたまにそれが母性本能くすぐってくれるんだよね。年上お姉さんとつきあってみる?」 女も調子にのって言ってくれる。 こっちはからかっているだけだから気にしてやらない。 トモは俺に強く抱きついて、女に嫉妬の目を向ける。 こっちは本気だ。 簡単に煽られる。 別に…トモのこと嫌いでもないし、つきあってもいいけど。 麻薬依存症の彼女は少し遠慮したい。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加