Still

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私は…好きだよ。晃佑。 晃佑は…一度も言ってないよね。 当たり前だ。 だって私のことはその記憶にないようなもの。 重ねた体も晃佑は覚えてない。 忘れていい。 相手は誰でもいい人に好きだと言ってるなんて、…ひどく惨めに思えるから。 私は晃佑を知ってるけれど、どんな人なのか知らなかった。 「…チカ、また電話する。その服も靴もおまえにやったものだし返さなくていいから」 晃佑はそう私に言葉を残すと、女の子たちに連れられるように歩き出した。 取り残されたように、私はしばらくその場から動けなかった。 晃佑はそういう人だ。 ねぇ?彼女なんてならないほうがよくない? どうせ私のこと好きでもないのに。 面倒なだけじゃない? セフレ? 酔っ払い晃佑に対してはそれでいいんじゃない? どうせ記憶にないから。 ……もう声も聞きたくない。 晃佑からの電話は、だけど、かかってくる。 私は晃佑の友達のつもりはない。 彼女のつもりでもない。 セフレのつもりでもない。 高校の同級生だとは認めてあげる。 私は着信音を切って、携帯を放置して。 レポートをまとめる宿題。 まとめ終わってから携帯を確認してみると、着信履歴は晃佑の名前で埋まっていた。 どうして私にここまで連絡をとろうとするのか、私は理解できそうにない。 これはなんの遊びだろう? 口説き落とす遊び? 口説かれなくても…落ちてる。 お風呂に入ってあがって、携帯の受信ランプを見る。 どうせ晃佑だろうと私は確認せずに無視をした。 そのまま眠る。 そんなふうに数日、ひたすら晃佑の電話を無視して、もうかかってこないだろうと着信音を出して眠った夜。 着信に起こされた。 寝ぼけながら出てしまった。 「…誰?」 なんて。 『チカの馬鹿。ボケ。アホ。ナス。カス』 なんて拗ねたような晃佑の声が耳に届く。 私は半分眠りながら、晃佑の声を聞いていた。 『起きろっ!』 「眠い…」 『家きて』 なんだろう?この人は。 夜中にたたき起こして家に呼ぶなんて。 ……かなりの寂しがり屋。 『……チカぁ』 甘えた声で呼ぶ。 私はトモカです。 私じゃなくても…晃佑の家にいきたがる女の子はいくらでもいるでしょ? 私は求めていないのだから、他の子に甘えればいい。
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