Drug

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俺の日常はぼんやりとただ過ぎていく。 仕事を始めてからのほうが毎日が過ぎるのが早い気がする。 12月。 風は冷たくて、もう冬だなと感じる季節。 俺はその日、隆太のバイト先のプールバーで店のオーナーで店長でハスラーとビリヤード勝負をしていた。 店にはそれなりの客もいる。 オーナーのくせに働かずにバイトに任せて、俺との勝負に熱くなっている。 俺はナインをゆっくりとポケットに落として。 オーナーはがっくりと肩を落としてくれる。 「おまえ、もうハスラーで食っていけば?ここの店長として雇ってやるから」 ハスラーに認められる俺のビリヤードの腕。 俺はご満悦ってやつで、オーナーから掛け金をせしめる。 といっても、1ゲーム500円と高いものでもない。 といっても、1ゲーム15分もかからずに終わるから、一日に20ゲーム以上していることになる。 勝てばいいけど、負けるとかなりの出費。 ついでに500円玉が増えて財布に入らない。 オーナーが玉を組んでくれているのを見ながら、キューを立てかけて、俺は煙草に火をつける。 一服して小休憩。 机の上に乱雑に置いていたポケットの中身。 財布、鍵、煙草、携帯。 大量の500円玉もまるでゲームのコインかのように転がっている。 それが俺のオーナーからせしめた勝負の結果。 今日はよく勝ってるほうだ。 負け続けて同じだけ持っていかれることもある。 ビリヤードなんて日によって調子がよかったり悪かったりするものかもしれない。 その中の携帯が気がつくと震えていて、俺は携帯を手にする。 表示されていたのは、あまり関わることはないけど、挨拶はする連れ。 トモの連れと言えるかもしれない、クスリをやってる男だ。 俺に電話をかけてくるのもめずらしい。 前に一度、俺にクスリを売ろうとするから、受け取った商品を金を払うことなく、泥水に投げ捨ててやったら関わってこなくなった。 あっちにとってはノリの悪い男と思われているだろう。 俺もそのノリにつきあう気もないし、それでいい。 その時殴りあいの喧嘩にならなかったのは、あっちが俺のことを恐れているからだろう。 仕事とビリヤードでついた筋肉ではあるけど、腕っぷしはあるほうだ。
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