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ノリの悪い男と思われていても、俺に挨拶をしてくるのは、まぁ、いろいろあって。
これだけこの土地に知り合いというものを増やしていると、なんかチームみたいなものにも見られて。
敵には回したくない男と思われているらしい。
そして敵も多いらしい。
俺はまったくもって、そういうものに興味はないけど、確かに人数を集めようと思えば、いくらでも集められる。
誰とでも話す俺のあり方と、元カノ関係でよく思われていないこともある。
俺はこの勝ちに乗っているビリヤード勝負に水をさされる気がしながら、とりあえず出てみる。
一声聞いただけでわかった。
クスリやっていやがる。
『コウ、今からカズの家来ないか?おもしろいもの見れるぞ』
「おもしろいものってなんだよ?というか、カズん家ってことは、集まってクスリやってんだろ?」
ある程度はこいつらの行動をトモから聞いて知っていて、俺はものすごく嫌なものに誘われそうで断るように言ってやる。
カズという男の家はこのへんで一番でかいマンションにあって。
30くらいのその男は、こいつよりも俺が更に関わりたくないヤクザの幹部といったところだ。
こいつら使ってクスリを売ってる男。
つまり立呑屋で出会ったGメンの松田さんが欲しがっていた情報。
イタチゴッコにならない一番上を俺は知っていて、こいつらを同時に売ることになりたくなくて黙っていたことになる。
『あー、ちょっとやってる。おまえがそういうの嫌いなの知ってるけど』
「だったらそういうものに俺を誘うなよ。ドラッグパーティーなんて俺はごめんだ」
『パーティーじゃなくて。おまえの元カノ。チカだっけ?いるんだけど』
俺は一瞬、言葉を失った。
見た目は確かにギャルっぽくなっていったけど、チカがそっちに興味を持つように思えない。
思えないけど、パーティーに参加している?
チカがクスリをやっている?
誰に誘われた?
チカは俺のまわりのすべての人間と関わろうとしていなかったはずだ。
「…妙な冗談やめろって。本当にいるなら電話かわってくれ」
完全にハマってしまう前に即やめさせてやらないと。
イカれたチカなんて見たくもない。
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