Drug

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携帯の受話器の向こう、何かの物音が聞こえて、しばらく静かになって。 「…チカ?」 本当にそこにチカがいるような気がして声をかけた。 電話の向こうからは泣いているような音が聞こえる。 本当にチカなのか? なんで泣いてる? クスリやって興奮したりしていないのか? ひたすらいろんな疑問ばかりが浮かんで。 『泣いてないでなんか言えって。悲鳴あげるか?』 なんていう男の声が聞こえたと思ったら、 『きゃあああっ!!』 なんていう大きな悲鳴が向こう側から聞こえた。 殺されそうなそんな泣いた悲鳴。 チカの悲鳴っ? 「チカっ!?」 俺は悲鳴に驚いて、大きな声をあげて。 一緒にビリヤードしていたオーナーが俺の様子に近づいてきてくれる。 『な?いるだろ?』 なんて、悲鳴あげさせておきながら、なんにも考えてない明るい声が聞こえた。 「おまえ、チカになにやったっ!?」 『髪引っ張っただけだって。けっこう抜けた。で、くる?』 俺は混乱しまくる自分を落ち着けさせる。 けど、どうやっても何を考えていいのかわからない。 ただ、なぜか体が震えていた。 携帯を耳に押しつけて、片手で頭を抱えて。 何を聞くべきか、何をするべきかわからない。 「……おまえ、チカに何した?俺をそこに呼んでどうしたい?」 『フラれた腹いせに犯せば?今、5人くらいで姦してた』 更に何を言えばいいのか、何を考えればいいのかわからなくなった。 チカ…。 助けに…いかないと。 なに?これ。 俺のせい? 俺が…こいつらと…知り合いだったから…? なんでチカが姦されてる? なんでチカっ? ひたすら混乱していた。 オーナーは固まって何も言えなくなった俺の手から携帯を手にして。 「はいよー。お電話かわりました。コウに言ったこともう一回言ってもらえるかな?」 なんてオーナーは軽く朗らかに言っていたかと思うと。 「………ふざけんな。そこで待ってろ」 ぶちギレて通話を切った。 俺は震えてた。 何をどうすればいいのかわからなくて。 オーナーはそんな俺の頭を叩いた。 ちょっと痛い。 顔をあげてオーナーを見る。 「とりあえず落ち着け。今すぐするべきことは?」 「……警察。カズの家にいく」 俺が答えると、オーナーはそのとおりとでもいうように頷いた。
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