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逃げてしまうなら、チカは元カノで別れてから数ヶ月、一度も連絡をとっていなかった。
俺は無関係で何も見ていない、聞いていないと、プールバーで電話を受けたときに逃げられた。
オーナーが俺を動かしてくれた。
逃げるなと動かしてくれた。
俺は部屋のほうに戻って、俺に電話してきた男のそばに寄る。
なんか殴られたのか頬を腫らして不機嫌だ。
「どうした?その顔」
「……トモがおまえに電話したら殴ってきた」
トモ?
俺は部屋の中を見回す。
女の姿はない。
俺がくる前にここを出た?
「呼んでやったのに、チカ犯さないのか?満足するまで俺らは犯させてもらったけど」
キレた。
殴りたくなるのを堪えた。
ふざけんなよと心の中で言ってやる。
「それ、誰が提案した?いつもはただのドラッグパーティーなんだろ?」
「だからトモだって。あいつがカズに言って計画したらしい。……俺はやめようって…言ったけど。まわりがやる気になって、一人で反対していられないだろ…?」
主犯はトモとカズらしい。
そいつはクスリもきれかけているのか、座り込んだ姿勢のまま俯いて、少し震えていた。
気弱なやつだ。
罪悪感を持ってるらしい。
他のやつはそうでもないし、こいつだけだろうけど。
「おまえもやったなら同罪。流される前に逃げろよ」
「…逃げたらハブられる。だから…、わかってたけど、おまえ呼んだ。チカの髪引っ張ったのはやりすぎた。ごめん。本当にごめん。……警察くる?」
そいつは独白のように勝手に吐いてくれた。
俺がここに何しにきたか、もうわかっている口ぶりだ。
「…さあな。前に警告はしただろ?このあたりの麻薬取締厳しくなってきているって。トモは?」
「……まだ家の中にいる。隠れてる。おまえに殴られるからって。……ごめん、コウ。パーティー前にも電話しようとしたのに…。本当にごめん。……チカにもごめんって…謝りたいけど…」
そいつの視線は部屋の中にいる他の男たちに向く。
談笑していたり、一人でトリップしていたり。
時間も時間だから眠っていたり。
「どんなに悔やんでも、過ぎたことは過ぎたこと。おまえがやった罪はおまえの罪だ。まわりに流された自分が悪い。そうだろ?」
「……ごめん」
そいつは本気で沈み込んで、顔に腕を当てて、そこから動かなくなった。
俺は立ち上がって。
カズよりも本当の主犯であるトモを探す。
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