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私は何も答えずに意識は半分、夢の中。
『……起きろよ。なぁ。…俺に興味あるくせに、そんな態度とるから気になるんだろうが。
……チカのこと教えて。最近、何してる?バイト?学校?
……他に興味あるやつできた?
………会いたい。今すぐ。家どこ?』
晃佑は一人でひたすら話してる。
かわいいくらいに寂しがり屋。
強引で自己中なのに寂しがり屋。
ぎゅって抱きしめてあげたくなる。
私はゆっくりと目を開けると、枕元の目覚まし時計を見る。
午前3時過ぎ。
どうしてこんな時間に晃佑が起きているのか不思議だ。
「仕事は?」
『…雨が降ってなければ、いつも通り朝から。雨が降ったら休み。…雨、降ればいいのに』
「眠くないの?」
『……寝て起きた。長時間眠れない。…チカを抱き枕にして寝たい』
ものすごく甘えてる。
どうして私に甘えるんだろう?
私は晃佑と深く長いつきあいもないのに。
二度遊んだだけ。
私は眠かった目も覚めて、ベッドの上で体を起こす。
「他の人には電話しないの?」
『…めんどくさい。こういうときはおまえと話してるのがいい』
私を喜ばせたいのだろうか?
ちょっと喜んでしまったじゃないか。
「お酒飲んで寝ればいいのに」
『おまえな…。現場に出てる仕事前日は飲まないって決めてる。落ちて死にたくない。…今、水族館建ててる。建ったら遊びにいこう?』
私は目を伏せて、私を誘ってくれる晃佑に一喜一憂してしまう気持ちを鎮める。
彼女扱いなのか、友達みんなにこうなのか。
晃佑のことはわからない。
でも……喜んでしまう私がいる。
抗いきれない私の感情。
……抱きしめられたい。
「雨が降ったらいく」
『……外、曇ってるっぽい。雨が降りだす前にきて』
言われて、私はカーテンを開けて、ベランダに出て空を見上げてみた。
曇ってる。
微かに雨が降りだす前の匂いがする。
いくなんて言うんじゃなかった。
「嘘。学校あるからまた寝る」
『なん、それっ。…こい』
「お願いも命令もされてあげない」
『おまえのお願いもきいてやらねっ』
「お願いなんて…電話しないでとしかしたことない」
『……何して欲しい?』
何して欲しいだろう?
……愛して欲しい。
願えるわけない。
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