Drug

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チカにとっては俺は別れた元カレというもので。 更には俺に会ってつきあっていたから、トモに妙な恨みを買って、こんな目に遭ったと言える。 それくらいよくわかっている。 俺がチカとつきあっていなければ、トモに恨まれることなんてなかった。 強姦なんてされるはずもなかった。 俺が近くにいないほうがいいのはわかる。 わかるけど…。 俺はチカを安心して任せられる、チカの連れも知らない。 チカのことを本当に考えてくれるチカの連れを知らない。 本当、…チカとのつきあいは恋愛ごっこだったのだろう。 俺は2ヶ月チカとつきあっていたのに、何も知らない。 チカは何も教えようともしなかった。 自分のことを知ってもらいたいと俺に望むことがなかったのだろう。 それだけの気持ちだったのはわかっている。 嫌われてはいなかっただけで。 今度のことで俺は本当に嫌われたかもしれない。 俺のまわりの人間に傷つけられたのだから。 俺がそいつらをかばってチカは傷つけられたのだから。 俺に非がないとは言わない。 それでも…。 俺は俺の部屋にチカを連れて帰って。 チカが気がつくまで、その頭を膝に乗せていた。 ぼろぼろになった髪、痣を残す顔。 体にも痣があるかもしれない。 とても見たくない。 濡れタオルを顔に当てて、冷やしてやる。 腕を縛られて抵抗も逃げることもできないチカを殴ったのはトモらしい。 チカのことを考えるなら、同じくらい殴ってやっておけばよかったかもしれない。 だけど…。 なんて考えて。 チカにそれでも嫌われたくないと思う俺は甘えていると思う。 こんな俺にチカが惚れてくれるわけがないとも思う。 惚れてくれることは望まない。 ただ、怖がらずに嫌わずにいてほしい。 そう思うだけで甘えている。 チカは気がついたかのように呻いて。 その腕を伸ばすから、俺はチカの体を膝の上に座らせて、俺に寄りかからせて、その背中を抱きしめる。 連絡をとってもいなかったのに。 少しずつ忘れていたのに。 その体を抱きしめたら、俺の胸はまた震えた。 俺はまだチカを諦めきれていないらしい。 ごめん、って、俺はチカに何度謝ればいいだろう? 甘えてごめん。 巻き込んでごめん。 傷つけてごめん。 ふれてごめん。 ごめん、ごめん、ごめん……。 こんなのでも惚れてるなんて……。 俺は最悪だ。
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