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「一緒に住むの?」
チカは聞いた。
2ヶ月以上ぶりのチカの最初の言葉だ。
やっと話してくれた。
……嫌われて…いてもおかしくはない。
話してくれただけでうれしい。
「そう。どうせそのまま引きこもるだろ?だったら俺んちに引きこもっておけばいい。仕事で家にいない時間多いし」
俺はチカに答えながら、チカが絶対に嫌だと言わないことを願って、チカを連れて帰る支度。
旅行鞄に詰める服は俺の好みだ。
再会した頃、つきあう前のチカの服。
下着ももちろん俺の好みとなる。
つきあっていたときに、何回かはセックスしたし、その下着は知っているのもあるけど。
「お。見たことないかわいい下着発見。これ着て?」
俺は見つけた苺柄のブラとパンツのセットをチカに見せて笑う。
チカは叫び出しそうな勢いで俺の手から下着を奪う。
チェックとかもかわいいよなぁとレースやレーヨンみたいなものより、綿を選んでいる俺がいる。
チカがこの場にいなければ、もっと部屋の中を捜索してみたいところだ。
俺の知らないチカを少しでも知ることができるから。
「服、今はそのまま俺の着ておくか。チカの服、体にぴったりして痛そうだし。下着つけたら病院な?保険証ある?」
俺は服を詰め込むと、別の鞄に日用品も詰めていって、完全にチカを俺の家に移住させようとしている。
チカは何も言わないし、何もしない。
本当に嫌なら、さっきのように俺の手から鞄を奪うだろう。
それでいいのだとチカが思っていることにした。
下着をつけたチカの手をひいて、今度は病院へ。
病院の次は美容室へ。
髪、ぼろぼろだったから。
俺はチカが美容室にいる間に、その近くの店で、チカと暮らす上で、すぐに必要になりそうなものを買う。
チカに選んでもらってもいいけど、今のチカは俺に流されているだけだから、選んでくれそうな気がしない。
流されているだけ…なのは、嫌だと別れたつもりなのに。
嫌がることがなければそれでいいと、俺はまたチカに押しつけている。
今は…それでもいいと思いたい。
一人で家にいたら食事もとらなさそうだし。
…俺がチカにできることをしたい。
何をしてやれるのか、まったくわからないけど。
俺が与えてしまった傷を…癒したい。
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