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殴ったことを傷害罪にしようとすればできる。
すべてはチカが許すか許さないかだ。
そのへんの罪は俺が決めることでもない。
「晃佑のセフレじゃないの?」
聞かれて、俺は本気で焦った。
「ちょっと待て。俺はセフレなんてつくったことないっ。セフレにするくらいなら彼女にしてるってっ。なにっ?俺、そんなに女好きに見えるのかっ?」
それだけは本当のこと。
俺はトモにキスをされたことはあっても、手を出したことはない。
セフレは本気でつくったことはない。
チカにそんなふうに見られたくないっ。
いや、わかってる。
自分がそう見られやすいことくらいは、嫌というほどわかっている。
わかってはいるけど、チカに誤解をされたくないっ。
「違う。別れる前…、晃佑、トモと手を繋いでこの家に帰ったでしょ?」
2ヶ月以上前のことを言われている。
俺はいつ、チカにそういうところを見られたのか思い出そうとしたけれど、思い当たるものがない。
というか…、トモを家に連れて帰ってくるのはよくあったこと。
チカと会う前から繰り返してること。
手を繋いでいたこと…を責められると、なんとも言い難いが。
手を繋いで歩いていただけでセフレになるのは微妙だ。
今日の俺とチカも手を繋いでいたし、よりを戻してつきあってはいないからセフレということになってしまう。
「……どこのことを言ってるのか謎だ。確かに何度かこの家にきたことはある。けど…、そういうんじゃなくて。クスリをやめる、更生するって言うから、薬物が抜けかけた禁断症状のときに夜につきあってやってた。
…やめなかったけどな、あの馬鹿。何度も何度も世話かけさせて繰り返して。もう警察で治療してもらえばいい」
俺はトモと会って、初めてこの家に連れて帰ったことを思い出して、そこから言ってやった。
何度も何度も…を思い出すと、さすがにイラついた。
「クスリ?」
「覚醒剤のときもあればコカイン、ヘロイン、その他諸々。お陰でそっち方面にも詳しくなった。…クスリやめられたらつきあってやるって言ってやったのに、まったくやめられる気配ないし」
俺はトモの言ったことを思い出す。
すべての原因を俺にしたトモの言葉。
……納得はしてやれないけど。
「つきあわないって態度を見せていたら、おまえが襲われた」
俺はチカに俺のせいだと告げた。
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