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「……おまえも同じこと思ったことあるだろって思うから言わない。…別にいいけど。モテるし、すぐに次の彼女見つけられるし」
いい加減、諦めろよと自分に言ってやっている。
妙な望みは捨ててしまえと自分に言ってやろう。
喜ぶ気持ちは仕方がない。
そこに求める気持ちを入れてはいけない。
また友達でとフラれてしまう。
「私は晃佑にフラれたと思うけど?」
チカのその一言に俺はムッとして。
手にしていたピアスをチカに投げつけてやる。
当たってもどうせ痛くない。
「おまえが振ったんだろ。別れてもいいっていう態度で俺とつきあっていたのはおまえだろ?」
なんて言ってしまって即、後悔。
そこに言葉を返されて傷つくのは俺だ。
「……もういいって。それ、もう掘り返さないでおこ?」
俺は話を切って、さっさと食事を終わらせる。
「振ってない。晃佑が言い出したんでしょ」
「だからもういいって。…俺が振ったことにしてくれていい。
寝る場所どうしようか?ベッド使う?」
俺は話を続けたくなくて話題を無理矢理かえてやる。
チカは俺の袖を無言で引っ張ってきた。
不満と言いたいことはわかってるつもりだ。
「一緒に寝ないから安心しろって。こたつ出して寝るか。布団買ってこないと」
俺は更に話を逸らす。
連れなら連れでいい。
それを言葉にしないでもらいたい。
俺が傷つくから。
「…私が居候してるのに」
逸れてくれた。
妥協させたかもしれない。
「俺が連れてきた。風呂入ったら薬塗ってやるから、さっさと食え」
「禿げを見ないでっ」
チカは頭を押さえて声をあげる。
…うん。ところどころ禿げてる。
痛かっただろうなと思う。
「すぐはえるって。そういえばずっとパーカー被りっぱなしで見てないけど、どんな感じにしたんだ?」
俺はここまで話せるようにもなったし、もういいだろとチカの被ったままのパーカーのフードを脱がせようとして。
チカは逃げまくったけど、俺が服を引っ張るとフードは脱げた。
ショートのチカの髪。
一瞬ビビった。
あまりにも見慣れなくて。
「…頭、ちっちゃ。長いの好きなのに」
俺はチカの頭にふれる。
今度は振り払われることはなくて。
頭皮マッサージのように頭皮を撫でていたら、チカはその視線を俺に向けて。
俺は視線を合わせて笑ってみせる。
少しずつでいい。
チカのすべてがいつか元通りになることを祈ろう。
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