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つきあってはいないけど、俺のまわりはつきあいが悪くなった俺を見て、俺に彼女ができたと思っている。
まぁ、似たようなものかもしれない。
俺はチカを優先している。
朝に吐きまくっていたチカにせめてカロリーを採らせようと、液体の食事やスポーツドリンクなんかを買って、それを手土産にまっすぐ帰る。
「精神的なものだろ?気分転換に次の休みにでも遊びにいくか?」
家に帰り着くと、当たり前のようにそこにいるチカにデートのお誘いをしてみた。
ちなみに次の休みはクリスマスとなる。
気分転換と理由をつけつつ、ただのデートのお誘いだ。
たまには外にチカと遊びにいきたいだけ。
せっかくのクリスマスというイベントだし。
「点滴打ってもらいに病院いくから、この食事はいいってば。気をつかいすぎっ」
チカは俺の手土産が気に入らなかったのか、まっすぐに俺の顔を見てどこか怒ったかのように言う。
「人の親切を気遣い無用と遠ざけんな」
「そんなに気を遣われたら、もっと吐くよ?」
「どんな脅しだよ…。じゃあ、俺のじい様が補修した神社に回復祈願参りにでもいくか。俺もその建物見たいし」
クリスマスだけど。
チカはまったく気にしてくれていないし。
というか、デートの誘いをしたとも思ってない。
土産も嫌がるし。
ちょっとだけムカつく。
「晃佑と神社ってなんか似合わないけど。晃佑んちの家業が大工さん?」
「一言余計だ。…じい様は宮大工。じい様は人間国宝」
「家業継がないの?別のところで働いているんでしょ?」
「父親は大工やっていないし家業とは言わないかも。じい様のところには弟子がたくさんいる。…憧れはするけどな。じい様の技術、貰えるものなら貰いたいけど、あの世界は厳しいし。会社に雇われて働いているほうが給与も貰える。
チカは?大学出たらなんの仕事するつもり?」
俺はチカと話しながら、冷蔵庫を開けて、食材を確認して、食事の準備。
まっすぐ帰ってくるから家で作ることが当たり前になってきた。
食材が冷蔵庫にあるのも俺としてはめずらしいものだ。
チカが作ってくれる。
一緒に狭いキッチンに立って。
俺は野菜を洗ったり、皮をピーラーで剥いたり。
包丁を使うのはチカに任せている。
料理をここで作るから、食器や調理器具も少しずつ増えている。
最初は包丁もまな板もなかった。
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