Days

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今、誰かにつきあおうと言われても、俺は断るだろう。 彼女はいないけど、そこにチカがいるから。 だけど…。 思うものはたくさんある。 別れた理由。 ここにチカがいる理由。 戻れば?と簡単に言われても、気持ちは簡単なものじゃない。 チカは俺のベッドで眠って、俺は買ってきた布団を床に敷いて寝る。 パジャマにしているスエットに着替えようと、ばっさばさ服を脱いでいたら視線を感じた。 チカがじーっと見てくれていて、その目を見ると、どこか恥ずかしくもなって。 チカに近づくと、目のあたりに手を当てて目隠ししてやった。 「減るもんじゃなし。恥ずかしいなら隠れて着替えればいいのに」 隠れて着替えるほどの間柄でもないと思う。 俺の全裸も見せているし、チカの全裸も俺は見ているし。 「おまえがじっと見てるからだろ」 それを言って、ふと思い出した。 振り払われたこと。 「…チカ、……まだこわいか?」 聞いてみると、チカは目隠しをした俺の手にふれた。 「…大丈夫。この手は私を傷つけようとしないから」 そう…だけど。 傷つけようとは思ってはいないけど。 手のひらにチカの涙を感じて、俺は目隠しをしていた手で、その目元を拭う。 ごめん、って、その涙に痛みを感じながら思う。 チカはその目を開けて、まっすぐに俺を見上げてくる。 俺の手に軽くふれたままだったチカの指先は震えていて。 チカは俺の手を震えを止めるように握る。 俺のせいなんだよなと思うと、更に胸は痛くなる。 俺とつきあわなければよかった…とか思われていそうだ。 俺とつきあわなければ、チカがトモと出会うこともなかった。 「…ごめん。さわらないから」 俺はチカから離れようとしたけど。 チカは頭を横に振って、どこか俺を求めてくれるような顔を見せて、その腕を俺にのばしてくれて。 俺は俺の望むままに、チカの背中を抱きしめる。 チカは震えながら俺の体にしがみつく。 チカは泣きながら、ひたすら俺にしがみついてくれて。 何を言えばいいのかもわからなくて、俺もその背中をただ抱いていた。 俺が泣きそうだ。 ごめん、って、どれだけ言えばいいのかわからない。 チカが震えるのは…強姦されたからだ。 強姦されたのは…。 チカが怯えたように震えると、それを忘れていられない。
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