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もしも…チカが俺に流されてくれるその態度が、俺に合わせたくてしてくれていることなのだとしたら…。
なんていいように思って、微妙に胸は落ち着かない。
いつもと違う木造建築が並ぶ小道をチカと手を繋いで歩く、のんびりとした休日のデート。
12月だし寒いと言えば寒いけど、太陽があるぶん、今日はまだ暖かい。
ケーキを食べに店に入ることもなく、ベンチに座って俺は缶コーヒー、チカはミルクティーで軽く休憩。
いつもの繁華街だと知り合いだらけで、必ずといっていいほど俺は声をかけられて、こんなのんびりすることもない。
たまにはこういうのもいいなと思う。
が。
俺の携帯が鳴る。
今日はクリスマス。
着信音切っておくべきだった。
わざと出ないようにするのもなんだしと、俺は電話に出る。
思ったとおりに遊びに誘われた。
去年の俺は彼女連れで他のやつらと遊んでいたから。
つきあい悪いと言われて苦笑いにしかならない。
さっさと終わらせようと断っていたのに、少し長くなってしまった。
またチカに首を絞められるのも嫌だし。
電話はなるべくしないようにしていたのに。
俺は電話を切ると、隣でぼんやりとしながらミルクティーを飲むチカのニット帽を被った頭にふれた。
チカは俺のほうを見てくれた。
「怒ってる?また少し電話長引いたし」
「遊びにいかないの?いってもいいよ?」
電話の会話の内容をわかられている。
向こう盛り上がっていたし、相手の声が大きかったのかもしれない。
いってもいい…は、一緒にはいってくれないということで。
一人でいってこいということだろう。
「…おまえとこうしてのんびりしてるほうがいい」
俺はそう答えた。
一緒にいってくれるのならいいのにと思う。
そりゃ…トモみたいな奴らもいるけど、俺のまわり全部、悪いことしている奴らでもない。
それでもチカは嫌がるから…。
なんてことを考えていたら、チカはいきなり泣き出して。
俺はその涙を指先で拭う。
チカが泣くと、いつもただごめんって気持ちになる。
泣いた理由はわからないけど。
ごめんって思う。
「チカ、俺の連れに混じるの嫌だろ?だから遊びに行かない。
……チカのほうが正しかったのかもな。トモと仲良くなっていたらクスリ勧められていたかもしれないし。チカなら、そういうことあっても逆に注意してくれそうな気がしていたけど。俺がトモに甘すぎた」
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