Days

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チカにトモと仲良くしてやれといった過去を反省するように言っただけだ。 チカは思いがけないことを言ってくれた。 「……ねぇ、晃佑。私の名前…チカじゃないよ」 「って、えっ?ちょっ、えっ?」 俺は思いきり戸惑う。 さっきの言葉でそう返ってくるとは思わなかった。 というか、名前が違うってっ。 俺はチカの名前、知花を最初にどう読むか悩んだときに考えた名前を思い出す。 「……もしかしてトモカって読む?」 聞いてみると、チカは…知花は当たり前のように今更頷きやがった。 ずっとずっと俺にチカと呼ばせておいて、何も言わなかったくせにっ。 違うなら違うと最初に言えっ! 「最初に言えよっ!ずっとチカチカって、俺、馬鹿みたいじゃねぇかっ!」 俺が当たり前のように声をあげると、 「チカでもいいよ?」 なんて言いやがる。 本気、怒る。キレる。 「嘘つき女っ。トモカはトモカだろっ!あーっ、くそっ。ずっと騙されていた…」 俺は溜め息をついて、本当に今更のことに泣きたくなる。 半年以上、俺はトモカをチカと思っていたわけだ。 「ごめん…」 知花は謝って、俺は知花を軽く睨むように見てやる。 知花はニット帽に手を当てて縮こまる。 騙していて怒られるのは当然と思ってくれているらしい。 「知花。…他に騙してることあるか?」 聞いてみると、知花は無言で頭を横に振りまくった。 ……溜め息出る。 つきあっていたけど、やっぱりそれだけ知花は俺に惚れてくれてなかったんだよなと思って。 「……はぁ…。なんで俺、こんなに騙されやすいんだろ…。知花の嘘は見抜けていたはずなのに」 「…チカでもいいよ?」 知花はどこかうれしそうに、俺をからかうようにもう一回言ってくれて。 俺は不機嫌に膨れて知花を見て、その頭を手のひらで小突くように手を当てる。 …それでも…、言ってくれたわけだし。 そこに納得するしかないのだろう。 「もう呼ばない。知花のボケ。ナス。カス」 俺は拗ねてそんな悪態をついて。 知花は笑って、俺の肩に甘えるように軽く額をぶつけてくる。 …かわいいし。 悔しいけど許してしまう甘い俺。 おまえが笑ってくれると、それでいいように思う。 俺はそれだけおまえに惚れてるけど。 おまえは俺をいつかは愛してくれる? なんて、とても聞けない。
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