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繰り返していた。
私がもういいと思って、もう会いたくないって思って、晃佑からの電話を無視して。
晃佑の電話に出てみて、呼び出されて、その腕の中で眠る。
繰り返しながら3ヶ月過ぎて、真夏。
私はなぜか晃佑の家にいる。
夏休みだろと言われて、バイトないなら家にきてといつものように呼び出されて。
眠って起きると晃佑は私をおいて仕事にいってしまっていた。
家を出ようとしたら、鍵がなかった。
メールをしたら帰るまで待てとの指示を受けた。
なので、なぜか私は一人でこの家にいる。
まちがっても同棲はしていない。
彼女になるとも言っていない。
暇すぎて…。
私は怒られるのを覚悟で家の中を物色してみた。
いつも寝るだけ。
じっくりと見たことはない。
棚に置かれたCD。
クローゼットにかけられた服。
たいしたものは何もない。
お金が出てきても盗まないけど。
おもしろいものないかなぁと探す。
棚の箱を開けると、アクセサリーが詰まっていた。
いつも同じものしか使っていないのに、けっこう色々ある。
指輪、ネックレス、ブレスレット。
男っぽいデザインのものばかりだけど、かっこいい。
ピアスもいくつかある。
片方の耳に1つあいているのは知っているけど。
赤い石のピアスを晃佑はいつもつけている。
その片割れのピアスを見つけて、それを手にしてみた。
シンプルな石だ。
深い赤。
晃佑は夕方に帰ってきて。
帰ってすぐに私をご飯に連れ出す。
ご飯を食べて少し外で遊んで、また晃佑の家に戻る。
…なんだかここにいるのが当たり前のようになってきているけど。
彼女じゃないはずだ。
「家、やっぱ暑いな…。電気代かかりそ」
なんて晃佑は言いながら冷房を思いきりかけて部屋を冷やす。
風を浴びて涼む晃佑の右耳にあの赤いピアスが見えた。
私は晃佑に近寄ると、そのピアスにふれてみる。
「これしかつけないの?」
「……こっちついてる」
晃佑は左耳の髪を耳にかけて私に見せる。
3つのピアス。
けっこう穴だらけだ。
「右耳は…確かにこれしかつけていないかも」
「こだわり?」
「…前の彼女の置き土産」
晃佑の過去にはどれだけの彼女がいるのか。
あんなに軽く私に言うくらいだから、かなりいるのだろう。
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