Deep

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真剣に言われたのなら、隆太だって考えるだろうけど。 このミクがそこまで真剣に隆太を押す気がしない。 「さあ?本人に聞けば?」 俺はわかっていながら、その会話を途切れさせるように、そう答えてやる。 ミクから離れるように飲み物を取りにいこうとしたら、ミクは俺についてきた。 人混みにはぐれないように、つきあっていたときのように、俺の腕に手を絡めてくる。 …複雑。 その手を引き離すのもなと思うのは、俺が甘いのか。 「今日はコウちゃんといる」 「連れは?」 「大丈夫。二人できたわけじゃないし、はぐれたふりしちゃう。…ねぇ、コウちゃん、奢って?」 甘えてきやがる。 そして俺はそんなふうに甘えられることに弱い、騙されやすい男だ。 とはいっても、自分の可能な範囲でしか奢らないけど。 俺はミクにも飲み物を奢って、結局、一緒にいる。 ミクは俺の扱い方をよくわかっているのか。 それとも、俺がミクのやり方に流されてしまうのか。 カウントダウンもミクの隣で、俺は微妙な新年の幕開け。 「ハッピーニューイヤー」 ミクは酔っているのか、明けて早々、俺に飛びついてきて、俺の唇にキスをした。 …かなり複雑。 そしてキスなんてどれくらいぶりにしていなかっただろう。 思えば知花と会ってから、俺はひたすら知花だけだった気がする。 つきあっていなくても。 「ん…、もう一回、キスしよ」 ミクは目を閉じて、ゆっくりと俺の唇を味わうかのようにキスをしてきて。 俺の手は誘われるがままに、その腰にふれて。 久しぶりのキス。 久しぶりの女の体。 俺の胸に寄せられるミクの胸の膨らみと、その唇に体が軽く反応してしまう。 …欲求不満らしい。 情けないけど。 俺からも思わず求めるようにミクの唇にキスをしていた。 唇を離したときにはけっこうな興奮状態で。 ミクの短いスカートから出た太股がそれをわかっているかのように、俺の下半身を撫でる。 う…。 なんか最悪な状態になっているような…。 俺はミクから目を逸らす。 「お手洗いいっちゃう?」 誘われてる。 俺が答えずにいると、俺の下半身は更に刺激されて、俺は慌ててそのミクの足を押さえる。 「もうつきあってないだろ。隆太だけ誘っておけ」 「コウちゃん、興奮しちゃってるのに?…コウちゃんが興奮しちゃうと、私も興奮しちゃう」 誰かミクの口を塞いでくれと思う。 更に興奮してしまいそうな自分に泣きたくなる。
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