Deep

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「コウちゃんっ、放置しちゃいやっ」 ミクは俺の腕を捕まえて、俺の腕に腕を引っかけて手を洗う。 勝手なことをしようとしているのに、ミクは俺を離さない。 …知花とは全然違うと思う。 「コウちゃんにしてあげたら、いっぱいされたくなっちゃった。コウちゃんちでしたいな。しよ?」 ミクは俺を見上げてストレートに言ってくれる。 「だめ。つきあってない。俺の家連れてったら、おまえに襲われる」 「襲っちゃう。コウちゃん、襲ってくれないもん。裸エプロンして誘惑しても襲ってくれなかったもん」 そういうこともあったなと思い出す。 家に帰ると彼女が裸エプロンでベッドに座っていた。 ベランダに放り出してしまおうかと思った。 思えば襲ったことがない。 …知花にも誘われて…だった。 いや、知花の場合は俺が襲ったら嫌がるから、いつからかそうなった。 しよ?と声はかけてみていたのは俺だ。 する?と言って俺の服を脱がせようとするのは知花だ。 そして我慢できなくなって襲うように知花をベッドに倒すのは俺だ。 …知花…。 また考えてる。 そんな俺にミクはまた絡みつくように抱きついてきて。 「コウちゃん、つきあったらするんでしょ?じゃ、もう一回つきあおうよ」 軽く笑って言われた。 お手軽。 その別れに俺がどんな気持ちになったかも知らないで。 なに?体目当て? 俺じゃなくても、おまえならいくらでも男ひっかけられるだろ。 俺のまわりではおまえはかわいいと言われていた。 誰にでも愛想がよくて、いつも笑って俺のまわりに気遣いして。 ……あれ?なんか、本当に知花と正反対? 「なぁ、ミク。それ、どこまで本気?酔った勢い?」 「そんなに酔ってないもん。本気は本気だよ?コウちゃんとつきあいたい。コウちゃんとえっちして、いちゃいちゃして、一日中ベッドで過ごすの」 うん、楽しそうだな。 イチャイチャ好きだ。 「でもな、俺、おまえにフラれたよな?」 「そんなのタイミングでしょ?今、私はリュウちゃんに相手してもらえなくて、相手もいなくて。コウちゃんも彼女がいない。つきあってもいいタイミングだと思うな」 まぁ、そうだな。 「でもな、おまえとこうして話すのも溜め息出そうなんだけど」 「今度はもっと楽しくつきあおうよ。ね?」 ミクはにこっと俺に笑ってみせる。 お手軽…。
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