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はっきりとした決断はできなくても、俺は一緒に住んでいたいし…。
なんて、けっこうな我が儘なのかもしれない。
彼女…のほうがいいけど。
彼女じゃないほうがいいような気もする。
迷っているから、余計に真剣に口説けと言われても、その言葉が出なかったのかもしれない。
ミクとつきあえば簡単に捨てられはするけど、特に何かを考えてつきあうことはない。
なんというか楽だ。
知花より波長があっているのか、悩むことはなにもなくつきあえる。
いや、それでも簡単に捨てられるんだけど。
あいつのことだから、また別の男か、やっぱり隆太がいいとでも言って捨ててくれるだろう。
……なんか、どっちもどっち?
誰とつきあっても…、結局は何か物足りなさを感じて、足りない何かを埋めるように一生懸命つきあって…、それでも足りなくて。
満たされる時間がまったくないわけでもないし。
繰り返してきた短い恋愛。
また俺の頭の片隅には知花の姿が浮かぶ。
俺はどうしようもないくらいに知花に愛されたいらしい。
そんな諦めきれない自分に溜め息をついて、フラれてしまえば諦めきれるのかなと思ったり。
うだうだと結論の出ないことを考えながら、一度きたことのある知花の家に到着。
俺の住むワンルームより収納が多くて、そのぶん部屋が少し狭いと思うワンルーム。
チャイムを鳴らすと知花は出てくれて。
俺はその家にあがって、荷物をまとめている知花を見る。
はっきりした返事ももらっていないが、知花は俺と住んでくれるらしい。
本当にそれでいいのかと確かめたくなる。
そして…知花は何を考えて、何を思って、俺と住んでもいいと思ってくれるのか聞きたくなる。
俺に流されてくれるのはわかるけど。
答えは口に出して言ってもらわないとわからない。
「……なぁ、知花」
「なに?」
「…俺と戻るつもりない?」
俺が聞いてみると、知花はその荷物をまとめる手を止めた。
フラれたら…何を言おうか?
間に合わせでいいから、とりあえず?もう一回?
…また軽いとでも思われそうだ。
どう言えば知花を納得させられるか考える。
求めたい言葉ばかり浮かぶのに、自分の口から紡げない。
甘えた言葉ばかり俺の中にある。
一緒にいて。
俺を愛して。
…情けない。
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