Still

12/13
前へ
/606ページ
次へ
「どれくらい前に別れた人?」 なんとなく聞いてみると、晃佑はにやりとした嫌な笑みを見せてくれる。 聞かなければよかった。 「気になる?嫉妬?」 私をからかうように晃佑は聞いて、私は何も答えずに晃佑から顔を逸らす。 私、彼女じゃないはずだし。 何人もいる晃佑の元カノに嫉妬なんてしたくない。 晃佑はそんな私の体に腕を回して抱きついてきて、私はその腕から離れようとして。 「チカと会う1週間前くらいに別れた女。もっと妬けば?」 って、なんかうれしそうに言ってる。 1週間って…。 晃佑の恋愛サイクルは早いと思う。 …私がつきあったことないだけかもしれないけど。 私にかけた言葉はいかにも軽いものだったって言ってると思う。 「私、晃佑の彼女じゃありません」 「もう彼女でいいだろ。俺のこと嫌いじゃないから、呼べばくるんだろ?だったらつきあっていてもよくないか?」 晃佑の手は私の体を撫でてきて、私は慌ててその手を止める。 「暑いから離れて」 「…おまえな、いい加減、そうやってかわすのやめろ。冷房ガンガンにかけてる。…しよ?」 後ろから私の耳元に声と息がかかって、私は抵抗するように離れようとがんばる。 晃佑の手は私の胸にふれて鷲掴んで、片腕は私の腰に回って逃してくれない。 3ヶ月…、ずっとこれだ。 私は晃佑と一緒にいても、ただ一緒に眠るだけしかしていない。 胸にふれていた晃佑の手は私の顎を掴んで、強引に私の顔を晃佑のほうへと振り返らせる。 晃佑は私の目をじっと見てくる。 私はその視線から逃れるように目を逸らす。 「チカ、せめて1回だけでもおまえを記憶に残させてくれる気ないか?したことあるはずなのに、俺の記憶にはないんだぞっ?」 「晃佑としたいって言う子は他にいるでしょ?」 「話逸れてる。俺はおまえに言ってるの。…キスもしたことない。いや、したかも知れないけど、俺の記憶にない。 ……無理矢理されるのが好きってわけでもないだろ? …もしかして酔ってるとき、無理矢理した?そっちのが好き?おまえ、縛られていたし。でも呼べば出てきてくれるし…、嫌われてるとは思えないんだけど」 晃佑は悩んだかのように独り言のように言葉を続けて。 顎を掴んでいた手は私の頬を撫でる。 私は晃佑には理解できない人のようだ。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加