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「…軽くないって言うなら、他の女に揺れんな、ボケ」
知花は少し黙ったかと思うと、そんなこと言いやがった。
揺れんなって、揺れてるつもりなんかねぇわ、ボケ。
俺は言いたい言葉を喧嘩にならないように堪えて、その腕を強く掴んだ。
「おまえな…、どっちなんだよっ?ひくのか押すのか、はっきりしやがれっ」
堪えてもどこか喧嘩越しに言ってしまう俺がいる。
「押されたら倒れるってすごくムカつく」
ムカつくってムカついているのは俺だっ。
「俺がおまえを押してるんだから倒れて当たり前だろっ」
そこまで言ってから、ふと冷静になる。
気がつくとやっぱり喧嘩になってきている。
「……ちょっと待て。なんで口喧嘩になってきた?」
「晃佑がまったく自分のことわかってないからじゃない?」
この女の口を塞いで黙らせたい。
おまえも喧嘩越しになってるからだろっ。
俺は知花を引き離して、涙も消えた顔で知花を膨れて見てやる。
知花は慰めていたくせに、どこか喧嘩越しな顔を見せていた。
「……わかった。俺が引き気味におまえに甘えるとこうなるってよくわかった。……おまえは俺の女でいろ。強制」
俺はこの会話でわかったことを言ってやって、強引にまとめてやる。
「…元カノと戻るか迷ってるくせにっ」
「迷ってる。おまえの言うとおり、おまえにミクを求めていたのもわかった。ミクの態度に惚れていたのもわかった」
俺は正直に言ってやる。
知花は更に怒ったかのように、不機嫌に俺の胸に拳を押し当てて俺を睨むように見てくる。
「ミクさんと戻れば?」
「嫌だ。俺はおまえがいい。おまえの素直じゃないところがいい」
理由をつけて言ってやると、知花は気に入らなかったらしい。
俺に殴りかかってこようとして、俺はその両手首を掴んで止めた。
けっこう暴力的。
「怒るなよっ。…おまえの外見、俺の理想なの。その中身のどこがいいのか言ったらそうなった」
中身…とか、よく考えたことはないけど。
外見を誉めて、だからミクとつきあうのは嫌だとは理由にしにくい。
「誉めてないっ。まったく誉めてないっ」
俺は外見以外の知花のことで好きなところを考えてみる。
「……Mっぽいとこ?」
「誉めてない、誉めてない、誉めてないっ。無理に言わなくていいっ」
誉め言葉と好きなところというのは違うようで。
けっこう難しい。
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