Deep

15/16
前へ
/606ページ
次へ
どういうことなら知花が怒ることなく喜ぶのか更に考えてみる。 けど、俺はそういうのは苦手らしい。 綺麗、かわいいと誉めていれば女は喜ぶ。 それ以外なんて難しい。 「…あ。これなら怒らない気がする」 「聞きたくない」 知花はもう言わなくていいと言いたげに俺から顔を逸らす。 それでも俺は言ってみる。 「俺に惚れてくれているところ」 こんな俺でも知花は言ってくれた。 俺が思うよりも大好きだと。 だから…、強気で、甘えることなく、押し倒す勢いで強引にいける。 知花が俺に惚れてくれているなら…、知花が俺が求めてもしてくれない、そのいくつかも妥協できる。 ミクと知花は違うから。 俺は知花のあり方に染まっていきたい。 嫌なこともあるだろうけど。 おまえといるのが一番好きだから。 おまえと過ごす時間が、そこにいる自分が好きだから。 「泣き虫なのもけっこう好きだし、しがみつくように抱きつかれるの好きだし…。おまえが作ってくれる料理も好きだし、笑ったらかわいいし。 ……これくらい言ってもダメ?」 俺は思いつくものをどんどん口に出してみる。 「…ダメ」 なんて、それでも知花は納得してくれない。 納得させて、このまま引き留めたいのに。 何をどう言えばいいのか本気で悩む。 さらりと口説き文句を口にできる男になりたいものだ。 「…おまえな…。……なんで俺に惚れてるくせに、そうなるわけ?おまえがいいってどれだけ言えば伝わる?どう口説けば納得する?」 結局思いつかなくて聞いてる。 「……酔ってる晃佑に言ってもらう」 酔ってる俺とここにいる俺は別人なのか。 「最近、記憶なくすほど飲んでないし。…言って?言ってやるから」 俺はまた少し甘えてみる。 言って欲しい言葉なんて知花しか知らない。 知花は少し言うのに躊躇った様子は見せたけど。 「……好きって言って。私だけって言って」 なんて、ものすごくかわいいことを求められて、俺はうれしくて思わずにやける。 それを俺に言わせたいって、きっと本当に俺が思う以上に知花に惚れられているって思えて、本気でうれしい。 なぁ?それって、おまえは、俺だけ、好きって思ってくれてるってことだろ? 「好き。知花だけ」 俺は知花の望みどおりに心からその言葉を口にして。 なんかかなり恥ずかしくなった。 なんかドキドキしまくる。 真面目に言う言葉でもないと思う。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加