Still

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私は強引に無理矢理する気もない晃佑の体に軽く寄りかかる。 嫌っていたらここにはいない。 それくらいは伝わっているらしい。 繰り返して繰り返して、私はまだここから離れられない。 晃佑が私に電話をかけてくるからだ。 ……晃佑から私の気持ちが離れていないからだ。 つきあうって…、よくわからない。 遊びでもこういうのならつきあってもいいのかなと少し思ったりもする。 彼女になっても今までと何も変わらないなら。 「……つきあってみる?」 私は晃佑に背中を寄りかからせたまま言ってみた。 彼女…って、なんだろう?って最近、思う。 晃佑と一緒にいると思う。 今ここには私と晃佑を隔てる壁がないように思うから、いいかなって思う。 ……つきあっても、晃佑は私だけなんて人にはならない。 それだけはよくわかってる。 「…今、めずらしい言葉が聞こえた気がする」 「……じゃあ、つきあわない」 「というか、つきあっていてもいなくても同じだろ?…つきあったからセックスするとか言ってくれる?」 晃佑はそこにかなり執着している。 何がそんなに気になるのかわからないけど。 私は晃佑を振り返って、その唇に私から初めてキスをしてみた。 軽くふれて離して、その晃佑の顔をまっすぐに見る。 「…する?」 聞いたら、晃佑は赤くなった。 「誘っておいて逃げるのなしだぞ?」 私はこくんと頷いてみせる。 晃佑は私の頬に手を当てて、私の唇にキスをしながら、私をそこに倒した。 ねぇ? 気に入ってはくれているから、私を呼んでくれるのはわかってる。 でもあなたの好きは軽くて、私の好きは少し重いかもしれない。 彼女になったら、どこまで嫉妬してもいいの? 彼女になったら、晃佑を独り占めできるわけじゃないでしょ? 何も変わらないんでしょ? 晃佑が女の子に連れ去られていくのを見ても、嫉妬したり寂しく思ってはいけないんでしょ? 私の体を抱く晃佑をじっと見ていたら、手のひらで目隠しされた。 「ヤバいくらい興奮してるからダメ」 「腕、縛る?」 「逃げたら縛る」 なんて。 逃げるつもりはなかったのだけど。 私は酔っ払い晃佑にされているときと同じように逃げてしまった。 腕、縛られて。 声が大きいからと口に布を噛まされて。 目隠しをされた。 酔っていてもいなくても、晃佑はサドだ。
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