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繁華街の中のダイニングバーで待ち合わせをした。
俺は隆太を知花との約束通りに連れていって。
知花は何を思ったのか、隆太の元カノを連れてきた。
わざとではなかったようだけど、さすがに俺は笑うしかない。
隆太もどこか嵌められたように、待ち合わせる前の気軽さもなくなった。
隆太とその元カノの関係は悪いわけでもないけど、気まずさはあるようで互いに言葉を交わすこともなく。
知花がトイレに席を立ち、時間差で隆太もトイレに向かって、はかってはいないけど、隆太の元カノと二人きりになった。
「しかし紫苑がスギと本当につきあってるとは。高校の頃からじゃ考えられないよね」
俺の前の席に座り、テーブルに肘をついて、元カノは俺をまじまじと眺めてくる。
知花の前ではあまり俺を見ないようにしていたけど。
視線が合うと微妙に照れる。
知花の彼氏として見られているんだなと思って。
「意外?」
「意外。紫苑より隆太のほうがまだわかるかも。紫苑は本当に別世界って感じだから」
「なに?その壁。俺と隆太、何か違う?」
「隆太は私とつきあってたくらい、壁が見えない人。紫苑はモテまくりだったからなぁ。余計にそう思うのかも。ハーレムつくってそうみたいな」
なんなんだ、その俺の評価。
かなり悪いじゃないか。
「知花の他に女がいそうに見えるってこと?」
聞いてみると、その元カノは少し悩んで、頭を横に振ってくれた。
「友達に会わせる企画したのは紫苑だって聞いた。いわゆる仲人にされてるのかなと思うから」
まぁ、互いの連れに互いの行動を見張られることにはなるだろう。
どうでもいいけど。
俺は彼女がいれば彼女だけだし。
浮気はしたことない。
ないが…、酔ったらキス魔になる女にキスをされてしまうことはある。
俺は隆太の元カノをぼんやりと見て、あの話をしてもいいか考える。
言うなら今しかない。
知花の帰りも遅いし、隆太に捕まって声をかけられてるのだろう。
隆太が俺の時間をつくってくれているとは考えにくいけど。
それで隆太に知花が落ちても…、別に…構わない。
俺は隆太を連れてくる反対はしたし、できることはした。
隆太を男として認めていないわけでもないし、知花が惚れたのなら…とは思う。
どうせ俺はフラれまくりだ。
隆太の彼女が俺に色目を遣ってきて奪ってつきあっても、ほんの短いつきあいにしかならない男だ。
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