Dreamy recollection

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隆太の元カノ。 そう悪い女には思えない。 ノリが軽いわけでもないし、口が軽いとも思えない。 「…この友達紹介、別の目的があったりするんだけど。話してみていい?」 少し真剣に言ってみると、元カノは頷いてくれて、俺は俺のせいで知花が強姦にあったことを話した。 その相手がクスリをやっていたこと。 俺はそれを知っていて、深く口を出さずに見過ごしていたこと。 俺に惚れていたトモの嫉妬が招いたという原因。 どんどん自分を責めているようになって、俺が知花とつきあっていていいのかなんて思ってきた。 惚れている。 けれど、知花に傷を残したのは…。 「…スギは言わないね。紫苑がそんなふうに凹んでしまうから、きっと誰にも言わない。私にも言わない」 「言わないのは知られたくないからだろ?俺のことは関係なく」 「知られたくない。そしてそれを紫苑のせいだと批難されたくない。紫苑とつきあうのをやめろと誰かに言われたら、スギは嫌がるよ。 ねぇ?知らないでしょ?スギは紫苑と別れていた期間、紫苑のことばかり考えていたよ。 私はスギの気持ちを大切に思うから、そのすべてを紫苑のせいだと、紫苑に責任を押しつけるような言葉を言いたくない。 だから紫苑も忘れな?スギに忘れてもらえるように、紫苑も気にしないで忘れればいい」 隆太の元カノとこんなふうに話したのは初めてだけど。 隆太に似ているような気がする。 「忘れても…いいことなのかわからないけど。知花の前では口にはしないでおこうと思う。 なぁ?知花、俺とつきあってたこと話した?別れたあとでも」 「うん、聞いたよ。…にやけるくらい戻りたいって悩んでた。あんなスギ、初めて見た」 戻りたいって…思ってくれたのは本当のことらしい。 何か聞いてはいけないことを聞いてしまっている気がする。 知花がいつも素直に自分の気持ちを俺に言わないから。 なんかドキドキして、知花が戻ってこないか通路の向こうを見てみたり。 元カノはそんな落ち着かない俺を見て、その口許に笑みをのせる。 「意外とお似合い?また別れたら教えてよ。別れる原因なんてスギにしかないような気がするから」 「俺が原因にはならないのか?」 「紫苑は真面目に女と向き合う人だと思う。その見た目とのギャップいいよね。どうしてもスギと戻れないときは、私が彼女候補になってあげる」
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