Dreamy recollection

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本気なのか冗談なのか。 こういうところも隆太に似てるよなと思う。 他人のいいところを見つけて誉めて、何も心配ないと前向きにさせる姿勢。 「なんで知花が原因になるんだ?」 「…こいつ、私の告白、簡単に流しやがった…」 言われて俺は軽く吹き出して苦笑い。 おまえもそこまで本気なわけでもないだろと思う。 「スギにとってみれば紫苑との恋愛が初めてのこと。つらいことがあったら簡単に逃げそうだなと思うから。私が隆太とのつきあいでそうだった。隆太は私の初めての彼氏でファーストキスの相手。……キスしたら終わったけど」 「おまえから別れを切り出したんだろ?隆太はおまえに惚れていたのに」 「…惚れてくれているって思えなくて、信じられなくて、一人で悩んで逃げたの」 元カノはどこか不満げに話してくれる。 それは…俺も知花との別れがそうだったように思う。 言ってくれないとわからないとか、信じていなかっただけなんだろう。 言われなくても。 真逆とも思えることを言われても。 そこにいたのだから信じるべきだった。 …なんて思っても、意思を欲しいと思うのは仕方がないように思う。 一人で恋愛している気持ちになりたくないから。 「…思い出?」 「そうだね。もう過去のことだから」 「隆太に未練あるなら引っかければ?あいつ、彼女いないし。ね?千香チャン」 俺はからかうように言ってやって、千香は俺を膨れっ面で見る。 こんなふうに隆太の元カノであるこいつを見たことはないけど、なかなかかわいい顔してると思う。 ストレートの黒髪好きかも。 知花と二人で連れだって遊ばないでくれと思う。 男にひっかけられそうだから。 「あっちにそういうのないのに言わないで。どうせ女取っ替え引っ替えしてたでしょ?」 図星だ。 千香と別れたあとの隆太はいろんな女とつきあっていた。 だけど。 「あいつにとっても、おまえが初めての彼女だったから」 教えてやると千香は知らなかったようで、どこか恥ずかしそうな顔を見せて。 更に冷やかしまくってしまおうかと思っていたところに知花が戻ってきた。 「お帰り」 俺は知花に手をのばして、その頬にふれる。 知花は千香の前でやめろと言わんばかりにすぐに振り払ってくれたけど。 俺は笑って。 知花に俺を信じてもらえるように精一杯努めようと思った。
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