Desertion

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俺の精神はとことん暗いのかもしれない。 連れがたくさんいて騒ぐ人間ほど、闇も大きいとはよく言ったものだと思う。 それをなるべく惚れた女には見せたくもないし、あの俺の中のものを知花に吐き出した日を早く忘れられるように、少しでも知花にいいところを見せようとがんばる日々。 知花がバイトの日は一人で軽く食べて、知花のバイトあがりにまた食べる。 俺が養うからバイトなんて辞めていいんじゃないか?と、知花と食事を作る時間が好きで思ったりする。 誕生日が過ぎて21になって、ふと思い出した。 知花のバイトが休みで食事の支度中。 「4ヶ月つきあったの初めてかもしれない」 「初めて記念にその右耳にピアス買ってあげようか?」 思わず呟いた言葉に、知花は俺の耳を濡れたままの手でふれた。 赤いピアスをはずしてから、そこには何もつけていない。 以前に見た夢を思い出して、そのピアスを気にされるとうれしくない。 また前みたいにいつの間にか箱に戻ってるなんて嫌だと思う。 「他にピアス持ってるけどつけていないだけだって。知花もピアスつける?穴あけてやろうか?一緒のピアスつけたりしてみる?」 「あけて?両耳のほうがいいのかな?3つくらいあけちゃう?」 そう返ってくるとは思ってなかった。 俺の右耳から離れるための話題だったのに。 「同じ位置に1つずつ。左の軟骨あたりに1つやるとかわいいかも。医者目指してるのにいいのか?」 「それ、なんにも関係ない。ピアスあけたから医者になれないっていう話は聞いたことない」 「んー、じゃあ、食べ終わったら」 知花はうれしそうな笑顔を見せて、うんうん頷く。 知花が笑顔で頷くその顔に惚れてるかもしれない。 かわいい。 食事のあと、俺がピアスを開けた時のように、知花の耳を氷で麻痺させてから、両耳、同じ位置にピアッサーでバチッと開けてやった。 知花は最初のわくわくした感じもどこへやら。 半分泣きそうな顔を見せて、2つめ開けるのも拒否してこようとしたから。 もう一つつけてやりたいところだけど、それでやめておいてやった。 その体に俺が穴を開けた。 別れたり離れたりしても、それは一生残る。 かなり満足。 その柔らかい知花の耳朶には消せない俺の印がついている。
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