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ミクと別れて1年。
ミクに与えられた傷も知花とのつきあいの中で癒えている。
その痛みがすべて消え去ることはないけど、それをずっと引きずって知花とつきあっていられない。
俺はこの程度の男でしかないけど。
フラれてばかりの魅力のない男かもしれないけど。
知花が惚れてくれているはずの幻想の俺に近づきたい。
期待を裏切らない男になりたい。
だから俺を信じて愛して。
いつか。
そう知花に望む。
隆太にミクを会わせると、ミクは隆太にはそういうことにしているというように、更に俺にかまってきて。
ミクの不器用さをわかりつつも、隆太に知花へ変な報告もされたくなくて、ミクを引き剥がすために人を呼んだ。
何人かに声をかけるとそのすべてがきて、何か大きな飲み会になってきた。
知花に何も言ってない。
早く帰らないと…と思いながらも、飲まされまくった。
ひらひらと透明な破片が真っ暗な空から降ってくる。
それに手を伸ばすと俺は指先を切った。
痛い。
赤い血液が俺の指から手の平に流れていく。
俺はそれでも欠片を集めて一つの何かにしようとしていた。
指先をざっくざく切りながら。
痛い。
けど、どうしてもその何かを作りたくて、必死になっている。
『晃佑』
知花の俺を呼ぶ声が聞こえて。
真っ暗な世界でその姿を探す。
見つからなくて。
かわりのように俺の体を裂く破片が空から降ってくる。
この破片に知花が傷つけられていないかと気になって、また知花を探して。
闇の中に座り込んで頭を抱えている知花を見つけた。
着ていたシャツを脱いで知花に頭からかける。
もう大丈夫だと声をかけても、知花は震えて怯えていた。
空からは破片が降り続く。
俺は知花を守るように、その頭を抱いて、破片を背中で受け止めた。
全身が痛い。
知花が怯えたままで泣きたくなる。
俺を信じて。
守るから。
ここにいるから。
大丈夫だから。
『愛して』
愛してる。
おまえの気持ちが離れても愛してる。
俺は強く知花を抱きしめて…。
瞼の向こうの光に誘われるように目を開けた。
知花の膝の上で。
自分の位置を把握できない。
飲んで…たぶん記憶なくして…それでも家に帰って。
知花の膝の上。
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