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捨てればよかった。
何度も投げ捨てたものを大事にとっておくつもりもなかった。
ミクに最初に返すことに決めたのは、ミクが俺にとってくる連絡を断つための俺の区切り。
酔わされて記憶飛ばして、その間のことをまったく覚えていないから、とりあえずおいておいただけだった。
いつものように食事の支度を知花と並んでしながら、ふと隣の知花の耳を見ると、俺がやったピアスがついていなかった。
「あれ?知花、ピアスどうした?」
「キャッチとれて、なくなっちゃった」
わからなくはないけど。
「……高かったのに。かわいかったのに」
ちょっとショックで思わず呟いた。
奮発したプレゼントなくされると悲しい。
「ごめん。……もうピアスつけるのやめとく」
それはいや。
ピアスは俺の印。
知花の体につけた消えない印。
「まだ穴、ちゃんと通ってないからつけないと。アクアマリンの石とかどう?誕生石だろ?なんか見繕って買ってくる」
俺はかわいい知花の耳にふれて、そこが化膿もしていないことを確かめて。
次はフリンジのピアスにしてやろうと思いながら、知花を笑わせるようにくすぐる。
知花は笑ってくれて、その笑顔を見れて俺は満足。
俺はおまえだけのものでいるから。
おまえも俺だけの女でいてほしい。
俺が求めた言葉を言えば、甘えたものになって、なんかすぐにぐちゃぐちゃになるし。
言わないけど、俺はいつもおまえに愛されていたい。
愛されていると思っていたい。
なんて思うけど。
そのピアスをなくしたと聞いたときから、知花の様子は少しおかしくなった。
俺が家に帰っても、まだ帰っていなかったり。
連絡もなく遅くに帰ってきて飯を食べてきたと言ったり。
また短いスカートや露出の多いものを着たり。
知花はなんでもないことのように見せるけど、違うってわかっていた。
わかっていても…、知花に何をしたい?とか、どうしたい?みたいなことは聞けなかった。
俺が聞きたくなくて、言われたくなくて。
別れでも言われそうで。
俺に落ち度なんていくらでもあるし、この程度の男でしかないし。
知花にプレゼントするピアスを選びながら、胸は痛む。
愛されてる。
そう信じていたいけど。
別れたい。
知花はそう思っていそうだ。
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