Desertion

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お互いにふれられたくない話題から逃れながら、お互いにふれられたくない話題を振って。 なんだかんだ言っても、隆太とのつきあいは長いから、わかりあっているとは思う。 俺は痛いところを突かれまくって、やけ酒のように少し飲みすぎた。 途中から記憶はない。 気がつくと、耳には知花と隆太の話す声が聞こえていた。 俺はまた知花の膝枕なのだろう。 頭を乗せている膝の心地よさ。 慣れ親しんだその体の厚みを抱く自分の腕。 ぎゅうっと知花の腰を抱いてる。 頭は二人の会話を聞くよりも、まだ心地いい眠りの中。 知花が俺を離れさせようと膝を揺らすから、俺は無意識の中で唸って、更にその体を引き留めるように抱く。 ここがいい。 知花の膝枕。 「……どんな飼育してそうなった?」 「なんにもしてない。…でも会ったときから甘えていたかも」 耳にはそんな会話が聞こえるけど。 会ったときから確かに甘えっぱなしな気がする。 誰よりも何よりも気を許してる。 おまえがそばにいると落ち着いて眠れる。 心地よさにふっとまた眠りに落ちて。 隆太がいるんだったと思い出すように、また起きて。 そんな微睡みを繰り返す。 「…軽いのに真面目っぽいね」 そんな知花の声にまた起きて。 気持ちいいけど、そろそろ起きないとなと思う。 どんな会話を知花と隆太がするのか聞いてみたくもあって。 俺はもう少し眠ったふりをしてみた。 「一言余計だ。…それで?どうしたいの?俺に奪われたいって言ったその心境をじっくり聞いてみようか」 俺の記憶がぶっ飛んでいる間に何かがあったらしい。 「…そんなこと言った?」 そんなふうに知花はごまかしたけど。 俺は寝ぼけた頭も少し冴えて、更に二人の会話を聞く。 「言ってコウに首絞められただろ。こいつのそんな独占欲、初めて見せてもらった。いつもは去る者追わず。女が俺にいい顔しようがお構い無し」 何してるんだ?俺。 首を絞めた?知花の? …隆太が言っていることのほうが本当なのだろう。 知花が隆太に奪われたいと言ったらしい。 それは…やっぱり、別れ話を…望まれているということなのか。 けれど隆太の言ってることは少し違う。 俺は追わないわけじゃない。 追わせてくれなかった。 「加藤くんを認めてるからだよ」 「話を逸らすの好き?」 「加藤くんは?」 「答えたがらないことほど吐かせたくなる。羞恥プレイ好きなのかも」
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