Desertion

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友達にはなりたくないし、なれないから。 俺は『今』を必死に繋ぐ。 その空気が消え去るように。 今までもそうしてきたつもりだけど、女は俺を捨てる。 俺の気持ちを無視して、俺を捨てる。 俺は遅くに帰ってきた知花の体を抱きしめて眠る。 夏も近くてくっついているのは暑いけど、離れていこうとしているそれを引き留めるかのように、その言葉を言わせないように、ただ抱きしめている。 「……暑い…」 知花はそんな言葉を漏らしてくれて、俺はエアコンのリモコンに手を伸ばすと、冷房をいれてやった。 離してやるつもりはない。 「……起きてる?」 「冷房ききすぎて寒い」 声をかけると今度はそう言われて、俺は足元に追いやっていた布団を俺と知花の体にかけて、知花の体を温めるように抱く。 「どこにいっていたか聞かないの?」 「おまえがここに帰ってくるならそれでいい」 恨み言を言えば、それをきっかけに話を切り出されそうで言えない。 どうして電話にも出ない? 心配したのに。 そんな言葉が俺の中にあるけど。 言えない。 「私がいないと寂しいの?一人で暮らしていたのに」 「……子供つくろうか?離れられないように」 「酔ってる?」 「……ごめん」 俺は謝って、その肩に甘えるように顔を埋める。 12月より知花の髪は伸びていて、そこに知花と過ごしてきた月日を感じる。 知花は俺の腕を離れさせて、俺を振り返り、何かと思ったら頬を摘ままれた。 俺は目を開けて、すぐ近くに見える知花の顔を見る。 よく頬を摘ままれる気がするのは、俺の気のせいじゃないと思う。 痛くはないけど…、うれしくもない。 知花の片手は俺の腕にふれて、腕をたどるように手にふれて。 俺は知花の手を指を絡めて握る。 「する?」 「……キスしよ?キスだけ」 セックスは嫌いじゃないけど。 したら、無理矢理しまくりそうな自分がこわい。 俺は知花の頭にふれて、その耳にかかる髪をかきあげながら、知花の唇に唇をあてた。 知花は目を閉じて俺の唇を受け入れてくれるけど、その耳には俺が新しくあげたアクアマリンのピアスもついていない。 一番強く知花の気持ちを感じられたときのように、知花は顎をあげて、俺のキスをもっととねだってくれることもなくて。 離れていくそれが悔しくて。 泣きそうで。 何をどうすればいいのかわからなくなる。
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