Dearest

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ミクとつきあっていたときの馬鹿みたいにいちゃついていた頃を思い出して。 よく笑ってくれる、かわいい彼女だったと思う。 もっと俺がミクだけにかまってやっていれば、隆太の入る隙なんてなかったかもしれない。 ミクが隆太に傾いた気持ちを責めたりはしない。 恨んだりもしない。 恋愛ごっこ。 だけど…、楽しかった。 俺は本当に好きだった。 寂しがり屋で甘えたで馬鹿で妹みたいなおまえが。 「帰ろうか」 俺はミクの背中に声をかける。 「…ラブホがいい」 「ふざけんな。俺はおまえと戻るつもりはないし、遊びでもセックスなんてしない。彼女に誤解されるだろうが」 俺が少し本気で言うと、ミクは泣き止んだ顔で俺を振り返る。 「コウちゃんがいい」 「しつこい。体をくれてやるのは賛成できないけど、いろんな男とつきあって、また惚れることができる男を見つければ?」 「えっち好きだもん。嫌嫌、代償にしてるわけじゃないよ?」 「性病だの妊娠だのあるだろ。遊びまくりは大概にしろ」 「ちゃんと相手選んでるっ。だからコウちゃんがいい。コウちゃん、ちゃんとゴムつけてくれる」 「……なぁ?最初に戻る?だからっ、彼女に誤解されんだろうがっ」 ミクは不満げに頬を膨らませる。 俺を遊べる男と認識されたくない。 正月のことは繰り返さない。 「二度と俺に連絡しないでくれ。おまえとは戻らないし、連れにもなる気はない」 俺が更に言うと、ミクは更に不満そうな顔を見せる。 「コウちゃん、嫌い」 「俺もおまえが嫌いだ」 俺はミクにそう返してやる。 本心から関わりたくないと嫌う意味ではなく。 こんな暗いところにミクを一人残して帰ることもできず、俺は手を差し出して。 ミクは俺の手に手を重ねて。 その小さな手を握って俺は歩き出す。 ミクは拗ねて、ひたすら嫌いと俺の背中に言ってくれるけど気にしてやらない。 「……私、コウちゃんの前だと我が儘で甘えてばかりだよね」 俺はそんなミクの言葉に俺が知花に見せてしまう態度を重ねて。 「…気を許してるってことだろ」 俺はそう答えてやる。 信号待ちで立ち止まると、手を繋いだまま、ミクは俺の背中に額を押し当てて甘えてきた。 「…………大好き」 心から言ってくれた気がして、俺は少しうれしくなって笑う。 惚れた者の負けというやつかもしれない。 知花に誤解されそうだから、ミクには絶対に同じ言葉を今更返してやらないけど。 好きだった。
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