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人を信じることは難しい。
信じていたのに裏切られたとなることを恐れるから。
何を裏切りと思うのかは人によって違うだろう。
俺は知花を信じている。
俺を受け入れてくれる人として。
ミクは俺を信じている。
だから俺に甘える。
俺が知花に望んだミクのあり方は、きっとそういうことなのだろう。
俺を信じて愛して。
信じられないときには逃げてもいい。
けれど、俺自身が裏切っているつもりもないから追いかける。
当然のことだ。
俺がおまえに惚れていることを信じていて欲しい。
たとえその気持ちが、おまえには軽いものだと思えても。
俺にとっては軽くないから追いかける。
知花が俺から逃げる理由はどこにもない。
『…うん、大丈夫でしょ。それだけ紫苑の気持ちがあるなら、ころっと転がるはず。だって私、スギから紫苑と別れたなんて聞いてない。別れたつもりでも別れた気持ちじゃないから誰かに言うこともないんだよ』
千香は電話の向こうでキーボードを叩く音を響かせながら俺に言ってくれる。
「って、千香は動いてくれないってこと?」
『必要ないじゃない。マンションの前で待ち伏せればいいんじゃない?会えば簡単に揺らぐから。そういうのって悩んでいても、言い出すのは衝動的なことでしょ。
スギが素直にならないようなら叩いてあげるから、まずは紫苑が動いて』
「…千香、おまえと話すのって2回目だけど…。クールだな」
『うるさい。今、仕事しながらだけど聞いてあげてるじゃない』
「隆太もバイト中でも暇があれば俺に声をかけてくるんだよな」
似てるなぁ。
放置はしないところ。
『あいつのことだから、それは単にサボってるだけ』
「まぁ、それもあるだろうけど」
『あいつの話はおいといて。痴話喧嘩の話を聞くのなんて面倒だからさっさと仲直りしてね』
「…これ、痴話喧嘩?」
『どう考えてもそうでしょ。紫苑もスギも冷めてもいないし、浮気してるわけでもないし。スギの一方的すぎるものでの痴話喧嘩。スギのやつ、愛が足りないなんて贅沢な』
「おまえは?彼氏できた?」
『…紫苑にもスギにも私の恋愛なんて話したくないんだけど』
「恋愛ごっこ?」
『かも。なんか一緒にいるだけ。楽しいときは楽しいし、好きだと思うけど。燃えないから喧嘩にもならない』
「燃える恋愛探して次いけば?」
『…そういうのだから軽いってスギに思われていそうなんだけど』
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