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…そうかもしれない。
たぶんこれは微妙な価値観の違いというものだろう。
経験や周囲の環境は違うから、そういうものはいくらでもあるだろう。
「ただ隙間を埋めるだけの恋愛ごっこくらいしていてもいいと思うけど、それに飽きているのに無理につきあうことはない…と俺は思う。軽い?」
『…そうでもないかも。でも燃えるのも疲れない?』
「疲れるくらい燃えたことあるのか?」
聞いて、どこかで似たような話をしたことを思い出す。
隆太との話だ。
『……自分は何もしていないくせに、一人で悩んで嫉妬して、一人で燃え上がって一人で炎上して疲れたことはあるよ。
…今のスギもそんな感じなのかな』
「その相手、隆太?」
『……それ以外にはいないと思う。隆太に言わないでよ?恥ずかしいから』
俺は隆太の千香の名前を出したときの反応を思い出す。
脈がないとは思えない。
千香のこの沈んだ感じも脈がないとは思えない。
「…もう一回隆太と燃え上がれば?」
『あっちにその気もないのに言わないで。…前も言った気がする。
紫苑がスギに完全に捨てられたら拾ってあげるから。さっさといってきな』
「前も言ったよな?それ。……知花にフラれたら本気でいくぞ?」
『いくらでも慰めてあげる。めちゃくちゃに犯されてあげてもいいよ』
微妙にドキッとした。
千香に鼓動を高鳴らせたなんて知花に知られたら、本気でフラれそうだ。
それでも…、千香、かわいいし。
男心としては差し出されるなら手を出してみたい女。
しかもめちゃくちゃに。
真面目そうな女ほど、めちゃくちゃにしたくなる。
「…本気?」
『なわけないでしょ。スギにフラれることないから言うだけ』
思いきりがっくりきたことは知花にはとても言えない。
俺、誘惑するような言葉に弱いかもしれない。
「……」
『……ちょっと紫苑。なに?浮気心?スギを取り戻そうとしてるくせになに考えてんのっ?』
「…すみません。……けどっ、おまえが悪いっ」
『私、なにもしてないっ』
「軽くそういうこと言うから悪いっ」
『ほんの冗談じゃない。…してみてもいいと思う相手にしか言えない冗談だけど』
「おまえ、俺を転がして楽しいかっ?」
『けっこう単純?…紫苑となら燃え上がれるかもね。燃えてくれそうだから』
また冗談にするくせにそういうこと言いやがる。
男に期待させるのうまそう。
…転がされるの嫌いじゃないけど。
知花にフラれたらマジでいってやろう。
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