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何かを期待してはずされるのは悔しいけど。
からかわれるような、そういうものも好きだったりする。
やっぱり女好きかも。
興味をまったくもてない女と出会ったことがない。
理想はあるにはある。
というか知花が理想だ。
けど、別に絶対にこれじゃないと嫌だなんて思うものもなく、顔も体格も年齢も気にしない。
最初は軽いものだけど、深く相手を知っていくうちに、ここがかわいいとか、そういうものを見つけて惚れていく。
…知花は……、高校の頃に知ったときから理想だ。
長い髪が、小さな肩が、細い腕や足や、その美人の顔が。
どんな中身でも惚れないはずがない。
隆太の元カノ、知花の連れの千香に興味をもって。
背中を押されて。
明日にでも知花を待ち伏せてみようかと思いながら、風呂に入って寝る。
眠れないけど横にはなる。
目を閉じて、そこに知花がいると浮かべていると安心したように眠気がくる。
浅い眠りに落ちて。
その浅い眠りにしがみついていたいのに、俺を起こすかのように携帯が鳴る。
サイレントにするのを忘れていた。
俺は起こされて不機嫌になりながら、暗がりの中で音を鳴らし続ける、ベッドの枕元に置いていた携帯に手を伸ばす。
着信名を見ると隆太だ。
時間は夜中。
肉体労働で働いている普通のやつなら起きていない。
俺だから起きていると思われている。
「夜中にうるせぇ。ボケ」
俺は通話ボタンを押すなり、思いきり不機嫌に言ってやる。
『…今、おまえの憧れの君を抱きしめてしまっているのだけど』
電話の向こうでそんなことをほざく。
やっぱり手を出したのかと、俺の頬はひくついて、眠かった目も完全に冴えて体を起こす。
「……なんの報告だよっ?ぶっ殺す。今すぐ離せっ」
もう手に入れたとか報告しそうでムカつく。
悪い意味で俺の期待を裏切らない真似をしてくれる。
けど、もしかしたら本当は知花はいなくて、俺の気持ちを試すためにキレさせたいだけなのかも…なんて、まだマシなほうへ思考転換してやろうとしたのに。
『ちょっと…っ。はな…』
離してと続きそうな知花の声が電話の向こうに聞こえた。
ぷちっときた。
本当に知花はこんな夜中に隆太といて、その腕の中にいるらしい。
知花は信じている。
が。
隆太は信じてやれそうにない。
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