Dearest

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『狙ってないっ。そこに踏み込まないように距離を置いていたつもりだっ。今のはイタズラがすぎただけっ』 なんて弁解してくるくせに。 というか、やっぱり何かをしたらしい。 『……かわいいんだけど。この反応。1回だけ貸してくれる気ない?』 なんてふざけたことを言ってきやがる。 貸されたくないと知花が嫌がってくれないなら終わってる。 俺の彼女になった女は隆太に奪われる率が高すぎるから。 『いてっ』 なんて声は聞こえてくるから、知花は隆太に抵抗はしているらしい。 …信じるしかない。 俺に惚れてくれていると。 他の男に眩まないと。 「知花を犯したら本気でやるぞ?……もうすぐ着く」 俺は最後の点滅信号を通り過ぎる。 そこまで遠いところじゃなくてよかったと思う。 『もうちょい待つ気ない?犯さないように落とすから』 落とす? …本気になっていやがる。 隆太から女を落とすなんて言葉はかなり久しぶりに聞いた。 俺が知花に惚れているとわかっているくせに、それでもかまわないと、奪うと宣言しやがる。 「俺を呼び寄せているのはおまえだろっ!」 俺は叫ぶように声をあげる。 見えたパーキングの料金板の明かり。 その隣の空き地。 俺はそこに座っていた隆太と知花の前に滑り込むように単車を停めた。 落とされる前には間に合ったらしい。 知花は隆太の腕から逃れようとした態勢で俺を見る。 俺はフルフェイスのメットを脱いで、つけていたイヤホンマイクをとって。 バイクのスタンドを足で蹴っておろす。 俺は隆太を無言で睨みつけて、その手を離せと言ってやる。 隆太は舌打ちして、俺の視線に知花から手を離した。 もしも…間に合わなくて。 いや、間に合っていなくて。 知花の気持ちが隆太に持っていかれていたら…。 どうしてこうも俺の惚れた女を奪う男と連れをしているのかと思う。 しかも奪っておいて、つきあうこともなく放置。 それが一番俺が隆太にキレる理由だ。 奪うなら、奪ったのなら、最後まで責任もってつきあえと言いたい。 その気もなく、落とすだけ落とす隆太が嫌いだ。 まったく俺のことを考えてくれていないわけでもないから、つきあわないというのはわかるけど。 その中途半端なところが大嫌いだ。 それでも…腐れ縁。 隆太とは切れない縁があるらしい。
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