Dearest

13/17
前へ
/606ページ
次へ
隆太はあっさりと何かを尾に引くこともなく帰ろうとして。 「単車に知花を乗せるの嫌だって。怪我させたくない」 俺は隆太を引き留めるように言ってやった。 「…待て、こら。そこで変な我が儘言うな。車に乗せて帰れって言うならとるぞ」 「やらない。これは俺の。おまえ俺の単車使って。おまえの車で帰るから」 「……俺がおまえ殴っていいと思うんだけど?」 殴るなら殴りやがれと思う。 当たってやる気はないけど。 けど拳を出されたら俺も拳出そうだし。 拳では勝ててしまいそうだからやめてもらいたい。 落とそうとしたくせに、自分の感情言うわけでもなく、あっさりと終わらせることがムカつく。 さっさと千香にでも拾ってもらって落ち着けばいいと思う。 俺は蹴ってきた隆太の足をかわして、隆太に足を振り上げる。 高校の頃、千香とつきあっていた隆太はかなり純情だった。 千香に惚れているくせに、学校ではまわりの目を気にして声もかけない。 放課後になると、そうでもないという素振りを見せながら、一目散に千香とのデートに向かう。 たった1ヶ月程度の期間だったけど。 その後は手を出すだけ出して、ひっかけるだけひっかけて、燃えることのないつきあいばかり。 だからその隆太の彼女は、隆太の連れをしていた俺にかまわれたがってきた。 そんなので俺が手をつけたって続くはずもなく、フラれる。 俺の彼女になった女は隆太に声をかけられて奪われる。 俺の恋愛はほぼすべて、こいつが関係してくる。 蹴りあいに決着はつかない。 隆太は渋々といった感じで知花を車に乗せて家に送ることを了承した。 俺は隆太の車の後ろをついていくように単車を走らせる。 もしも…、隆太がまともにつきあうのなら…知花を渡してもかまわないと思う。 まともにつきあう気もないなら、からかうように手を出すなと言いたい。 知花は…俺の理想。 二度と恋愛できないと思うくらい深くハマったけど、少し間をあけて落ち着いてみると、俺は知花ではなくても誰かを好きになることはできる。 おまえしか、いない、とは言わない。 おまえしか、いらない、けど。 俺の感情すべて受け止めていてくれとは言わない。 逃げたければ逃げて、他に惚れた男ができたのなら、そっちにいけばいい。 追わないでくれとおまえが言うのなら追わない。 隆太がまともにつきあうのなら、知花が隆太に転んでもかまわない。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加