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隆太は不機嫌に俺から顔を逸らして黙秘。
黙って仕事をする。
こんなやつではないけど、千香のことになるとこんなやつになるらしい。
無理矢理、千香と体の関係持ってやろうかと思う。
隆太がどう反応してくれるのか見てみたい。
それで知花とのつきあいが壊れるのは嫌だと思うところもあれば、そこにしがみついているほうが嫌だと思うこともある。
…信じてもらえていないままなら、俺が何をしたって同じだ。
浮気しても妬きたくないと目を逸らされる程度の気持ちしかもらえないのなら…。
要は単に拗ねているとも言える。
そして手を出してみたいと千香に思うのは本当の気持ちでもあるから。
知花と別れることになったら、マジでつきあってもらおうと思える相手だ。
かわいいし。
まったくもって不足はない。
千香が燃えたいなら燃やす。
知花のように過去に燃えるより現在に燃えてくれるほうがいい。
なんて考えてみると、千香とつきあったほうが楽しそうにも思える。
「…バーテンさん、おかわり」
俺は隆太にビールのおかわりを頼んで、隆太は黙秘のまま、黙々と仕事をする。
「……おまえは千香がいいの?知花がいいの?おまえの選ばなかったほうとつきあおうと思うんだけど」
「トモちゃんにそんなにチクられたいのか?あんなに必死に取り戻そうとしたくせに」
「チクってもいいけど、まだ千香とどうこうなってない」
「キスしたんだろ?」
「おまえも知花の耳にキスしたんだろ?」
「…なに?妬いてるのか?だから千香に手を出す?」
「だからおまえと千香は1ヶ月くらいのつきあいしかない元カノ、元カレってやつだろ?俺が千香と仲良くしたら、なんでおまえが妬く?妬くくらい未練あるなら戻ろうとでもしてみれば?」
そこまで言ってやると、隆太はまた黙秘。
仕事に戻る。
殴ってみようか?
いい加減イラついてきた。
千香が…泣くから。
隆太にぎゃあぎゃあ言われて泣くから。
うるさいと無視しないで泣いたりするから。
これは隆太や俺のためじゃなくて、千香のため。
かわいいと思う女の役に立ちたいと思う。
破壊でもなんでも、過去をぶっ壊して現在にしてやりたい。
千香を。
「二股にするかな。千香は簡単に了承しなさそうだけど。知花には内緒で」
「…俺に言うな。やるなら黙ってしろ」
「千香に手を出していいんだ?」
「……ただの元カノだし」
「初めて惚れた女。最初で最後のまともなつきあいの女」
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