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なぁ?
知花はこんな俺だけど、本気でいてくれている?
俺に本気で惚れてくれている?
なんて、とても聞けない。
それでもそう感じた。
知花が本気でミクを追い払うようなことをしたから。
知花は俺の顔を見上げて、頬を膨らませて不機嫌満開だ。
それでもうれしいものはうれしくて、笑ってしまうのは止められそうにない。
「家、帰る?知花んちに帰ろうか?」
「飲み直そう。加藤くん、バイトしてるかな?加藤くんのお店いこ?」
知花は普通に隆太の名前を出して、隆太がいる場所へ誘いやがる。
一気にうれしい気持ちが冷めた。
俺にそんなに嫉妬をさせたいのか、と。
「なぁ、知花。それって仕返し?俺のは不可抗力だろっ。それにちゃんと断った。…黙らせたのは知花だけど」
「仕返しなんかじゃないってば。普通に飲みにいきたいだけ。なんで仕返しになるの?」
知花は不思議そうに聞いてくれる。
隆太は思いきり知花の中では安全な人物にされているらしい。
耳にキスをされて、抱きしめられていたくせに。
隆太がそこまで手を出すのも稀だと思う。
最後まで手をつけたミクとのことも稀だ。
だからミクを隆太が振るとは思っていなかった。
思っていなかったけど、隆太は軽いと理由をつけてミクを振った。
そんな理由がつくのなら、かたい知花とならつきあうのかと、いつか聞いたと思う。
まぁ、そういうことで隆太というライバル排除の目的もあって、千香を落とすように仕向けたけれど、その隆太の視線がまだ知花を見ているのかどうかはわからない。
「おまえな、隆太に狙われてるって思わないのか?」
聞いてみると知花は少し今までのことを考えてみてくれたらしい。
「大丈夫。晃佑が見張ってるから」
知花はそんな答えを俺にくれる。
いや、見張るけど。
隆太が手を出しそうなものなら、今度は千香を呼び出してでも止めるけど。
……知花のそういう信じ方はどうなんだろう。
まぁ、信じてくれているのだとは思えるけど。
俺が知花に惚れていると、知花と別れるつもりはないと、信じてくれているのだとは思えるけど。
「……酔っても見張っていられるかな。俺」
「大丈夫。加藤くんに見せつけようと私に絡みまくるだけだから」
「あんまり変わらないのな、俺」
知花はうんうんと頷いて、俺の手をしっかり握って。
俺は知花とプールバーへ向かう。
隆太がいないことを祈って。
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