Day to day

19/25
前へ
/606ページ
次へ
プールバーにいってみると、連休だからか、それなりの客入りがあって。 隆太はいたけど、俺にかまっている時間もないというくらいに働いていた。 隆太の姿を見ると千香を思い出して、ちゃんと落とそうとしてくれているのかと聞きたくもなって。 それはさすがに知花の前では聞けず、俺は知花にビリヤードを教えて、キューの握り方と突き方を教えて、とりあえずゲームを始めてみる。 公式戦でもよくあるナインボール。 1から順に9まで玉をポケットに落としていって、玉をポケットに落とせなければ交代。 とにかくナインを落としたほうが勝ちとなる。 ブレイクに思いきりキューを振ると、大きな音を響かせて組まれた玉が散り散りにラシャの上を転がる。 そのブレイクの玉と玉がぶつかる破壊音と、力いっぱいキューを振ることにストレス発散を感じている。 玉が2つポケットに落ちて、俺はいつものように次の玉を狙おうとして。 「私の順番回ってこないよね?」 知花に言われて気がついた。 初心者とゲームなんてできない。 確かにずっと俺が突くことになる。 「……マスワリ決めても知花つまんないよな。俺は1回、知花は5回突いて交代でどう?」 5回突いても落ちないかもしれないし、ゲーム進めるために5回に1回は交代してもらわないと。 1時間以上、手玉をひたすら突き続けるだけになりかねない。 「晃佑に負けないくらい上手くなってやるっ」 知花はどこか悔しげに俺に言葉を返して、ゆっくりと手玉に向かってキューを構える。 俺が教えてやったのだけど、知花が構えるとどこかかっこいい。 腕も背中も足もぴしっとして、顎でラインもとれていて。 なんて思ってその構えを見ていたけど、俺が渡したスカートが短すぎた。 もう少し体を前に倒すと下着見えそう。 俺は辺りを見る。 店内は男が多い。 女がいるほうがめずらしいくらいに、なぜかビリヤードをするのは男が多い。 知花に男の視線が集まっていて、俺は慌てて知花のその足を隠すように背後から抱きついた。 見られたくない…。 他の男に見せたくない。 そう思うのは普通だと思う。 「キュー当たるよ?」 知花はキューを振ろうとして、俺を振り返って見上げてくる。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加