584人が本棚に入れています
本棚に追加
プールバーにいってみると、連休だからか、それなりの客入りがあって。
隆太はいたけど、俺にかまっている時間もないというくらいに働いていた。
隆太の姿を見ると千香を思い出して、ちゃんと落とそうとしてくれているのかと聞きたくもなって。
それはさすがに知花の前では聞けず、俺は知花にビリヤードを教えて、キューの握り方と突き方を教えて、とりあえずゲームを始めてみる。
公式戦でもよくあるナインボール。
1から順に9まで玉をポケットに落としていって、玉をポケットに落とせなければ交代。
とにかくナインを落としたほうが勝ちとなる。
ブレイクに思いきりキューを振ると、大きな音を響かせて組まれた玉が散り散りにラシャの上を転がる。
そのブレイクの玉と玉がぶつかる破壊音と、力いっぱいキューを振ることにストレス発散を感じている。
玉が2つポケットに落ちて、俺はいつものように次の玉を狙おうとして。
「私の順番回ってこないよね?」
知花に言われて気がついた。
初心者とゲームなんてできない。
確かにずっと俺が突くことになる。
「……マスワリ決めても知花つまんないよな。俺は1回、知花は5回突いて交代でどう?」
5回突いても落ちないかもしれないし、ゲーム進めるために5回に1回は交代してもらわないと。
1時間以上、手玉をひたすら突き続けるだけになりかねない。
「晃佑に負けないくらい上手くなってやるっ」
知花はどこか悔しげに俺に言葉を返して、ゆっくりと手玉に向かってキューを構える。
俺が教えてやったのだけど、知花が構えるとどこかかっこいい。
腕も背中も足もぴしっとして、顎でラインもとれていて。
なんて思ってその構えを見ていたけど、俺が渡したスカートが短すぎた。
もう少し体を前に倒すと下着見えそう。
俺は辺りを見る。
店内は男が多い。
女がいるほうがめずらしいくらいに、なぜかビリヤードをするのは男が多い。
知花に男の視線が集まっていて、俺は慌てて知花のその足を隠すように背後から抱きついた。
見られたくない…。
他の男に見せたくない。
そう思うのは普通だと思う。
「キュー当たるよ?」
知花はキューを振ろうとして、俺を振り返って見上げてくる。
最初のコメントを投稿しよう!