Day to day

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妬いてくれるのはよしとしよう。 ただ、やましい気持ちを一つも持っていないところに妬かれてもムカつく。 少しは信じろと言いたくなる。 なんていう痴話喧嘩で知花の添い寝もしてもらえず。 別々の家。 喧嘩をしたときには同棲していなくてよかったようにも思う。 俺はこんなので謝ってやるべきなのかと千香に電話をかけた。 真夜中。 相変わらず知花の添い寝がないと不眠症がある。 『…眠いよ、紫苑』 どこか泣きそうな声で俺の愚痴を聞いていた千香は言ってくれる。 「千香んちいくから浮気しよっか?」 なんて俺はただの知花への腹いせのように言って。 『誘わないで。くらりといっちゃいそうだから』 眠気を堪えながら、千香はそんな言葉を返してくれる。 …くらりとしてくれてもいいけど。 眠気にくらりだったら、無理矢理叩き起こしてやる。 知花もここを疑ってくれれば俺も反省してやるものを。 「隆太と何か進展あった?」 『…もう一回謝ったほうがいいってこと?』 千香は意味がわからないとでも言いたげに言ってくれて、俺は隆太が有言実行をしていないと知る。 隆太の尻を蹴ってやりたい。 「…いや、いい。…電話でしよっか?エロいこと」 『……また隆太に怒られる。知花に会わせる顔なくなっちゃう』 「脈あり?」 『…嫌い。からかってくれるから。…やっぱりもう紫苑からも電話しないで』 脈ありすぎ。 揺れてくれる。 またキスしたい。 …なんて。 そうもいかないけど。 「いい男、身近にいないのか?」 『…電話の向こうにいるみたい』 「誘惑には弱いのでしないようにお願いします」 『…していません。紫苑をいい男だって言ってあげただけ』 「誉められると男って喜ぶの知ってる?」 『セックスも上手でしょ?』 「…俺も千香嫌いかも。からかってくれるから」 『じゃあ、おあいこってことだね。……スギと仲良くね。紫苑に心配されないようにがんばって男つくるよ』 「俺がおまえを燃やしてやるよ?」 少しだけ本気で口説くと千香は電話の向こうで笑った。 『私とスギが燃えちゃうじゃない。恋のライバルって。…本当にごめんね。ありがとう』 どうにかしてやりたい気持ちは大きい。 ただ、だけど、俺が踏み込みすぎるのは…よくないってわかってる。 千香もわかっている。 電話の向こうの呼吸を聞きながら目を閉じる。
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