Cage(Chika↓all)

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私は鳥籠を持っていない。 高校3年の春。 部活もバイトもしていなくて、進学するつもりもない私は予備校に通うこともなく。 夢という夢も描けず、やりたいこともわからなくて、友達を見送ると一人で家に向かって帰る。 徒歩通学。 家に帰るまでの間にある児童公園を横目に見て、夕焼けの中の桜を見上げる。 立ち止まった足は、何を考えるでもなく公園の中へ向かった。 いつから児童公園で遊ぶことをやめたのか、すべての遊具が小さく感じた。 鉄の冷たさを手のひらに感じながら、ジャングルジムや滑り台にふれて、公園を一周すると鞄を置いて、ブランコに立ち乗りしてみる。 こんなに小さなものだったかなと思う。 この公園でよく遊んでいたはずなのに、その時には広い公園に思ったはずなのに。 あの頃はどんな夢をみていただろう。 ブランコを漕ぐとギィっと錆びた鉄が擦れ合う音が響いた。 その音を聞きながら、ブランコの漕ぎ方を思い出してきて、どこまで漕げるか遊んでみた。 高校3年にもなって、一人で。 端から見るとおかしい人に思われそうだ。 ブランコの近くには桜の木。 あの桜を掴めるか遊んだなと小さい頃を思い出す。 まっすぐ家に帰ってもすることはない。 暗くなるまで出歩いていても、うるさく言ってくる親もいない。 両親は共働きだ。 何もすることがないなら家のこと、何かしなさいって怒られるけど。 ひたすらブランコを漕いでいたら、いつからか児童公園の中に同じ学校の制服の男がいた。 こっちを見ている。 私は短いスカートを見て、パンチラを思って、悲鳴をあげてしまいたい気持ちでブランコから飛び降りる。 小さい頃のほうが運動神経よかったのかもしれない。 思いきり着地に失敗して、私は地面に転んだ。 思いきりかっこ悪い。 恥ずかしい。 立ち上がって逃げ出したいのに、ちょっと足が痛い。 俯いていたら、私にかかった人の影。 顔を上げると、そこにいたのは同じ学校、同じ学年の男。 加藤隆太。 同じクラス。 黙って私を見下ろしてくれている。 「……パンツ見たでしょ?」 恥ずかしく思いながら聞いてやると、加藤は笑った。 「しましま」 しっかり見られてるしっ。 立ち上がって加藤を叩いてやろうとしたら、加藤は私のスカートの汚れを払うようにふれてきて。 私はびくっとして、慌てて加藤から距離をとる。
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