Cage(Chika↓all)

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高校生。 バイトもしていなくて、お小遣いもそんなに多いわけでもなくて。 でも隆太はちょっとだけお坊ちゃん。 お父さんは弁護士。 私よりお小遣いは多くて、自販機で私にジュースを買って奢ってくれる。 初めて遊んだ夜から数日。 ほぼ毎日のように遊んでる。 土日は遊ばない。 平日の放課後だけ。 「進学?」 「したくないけど。予備校サボってる」 「…もしかして私と一緒にいる時間、本当は予備校?」 隆太は当たり前のように頷いてくれる。 なんだか私がいけないことをしてしまっているように思う。 「予備校行きなよ」 「勉強ばかりさせられたくないって。夏になったら考える。千香は?毎日遊んでいていいのか?」 「…どこ行ってたの?って聞かれるだけ」 うちの親は甘いのかもしれない。 隆太に買ってもらったジュースを手に、近くの川原の土手を下りていく。 真っ暗だ。 なんにも見えないと言えば見えないし、少しは闇に目が慣れて、見えると言えば見える。 一人ではこんなところ、こんな時間にきたくないって思う。 「千香、ちょっと待った。おまえ、よくそんな歩けるな。見えないって」 そんな隆太の声に振り返ると、隆太は恐る恐るといった感じに土手を下りていて笑えた。 近くにいって手を貸してあげるように差し出す。 「……手、繋ぐの恥ずかしい」 なんて、かわいいこと言ってくれちゃう。 「女装しているだけの男友達とでも思えば?どうせよく見えないでしょ?」 私は隆太のブレザーの袖を握って、引っ張って歩く。 手は握らないであげた。 「千香、けっこう背ある?160以上?」 「162。ヒール履いたら隆太より高くなるかな?」 「似合わないから履かなくていいだろ」 「…たまにひどいこと言ってくれるよね。だから男扱いすれば?」 「男とも手は繋がないだろっ」 なんて隆太は言ったかと思うと、私の肩にその腕を回してきて。 私の心臓が飛び跳ねそうなほど驚いた。 足も止まってしまう。 顔、絶対、真っ赤になってる。 暗くて見えなくてよかったって思う。 「……肩幅、小さい。千香は女」 隆太は私の肩から手を離す。 友達。 ただの…友達。 彼氏なんかじゃない。 毎日…二人きりでいるようなものだけど。 そんなふうに思っても、高鳴ってしまった鼓動はしばらくそのままだった。
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