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つきあった…と思う。
何も変わらないけど。
相変わらず学校では言葉もかわさない。
彼女…になったはずなのだけど、隆太の隣には相変わらず原田さんがいる。
べったりくっついているのに、隆太は何も気にした様子もなく。
私と視線が合うと私から目を逸らす。
わざと嫉妬させられているのか、なんなのかわからない。
やっぱりつきあっていないのかも。
なんてことを思いながら、スギと昼休みを過ごしていると、私にライブチケットを売りつけてきた男友達にまた呼ばれた。
廊下に出て話していると、なんか本当にバンドやろうって話になってきた。
「タンバリン?」
「ドラム」
「絶対無理。リズム感なんてないよ」
「8ビートくらい叩けるって。てことで、これ、貢ぎ物」
男友達はドラムのスティックを渡してきて、軽く教えてくれる。
私は渋々、やってみる。
普通にできてしまった。
本物の太鼓を叩けるかはわからない。
わからないけど、このまま無理矢理ドラムやらされそうだ。
なんてことがあった放課後、スティックをくるくる回しながら隆太を待つ。
同じクラスなのに、一緒に学校を出ることもない。
私は浮気相手なのかもしれない。
隆太には他に本命がいるのかもしれない。
隆太はいつものように自転車を公園の入口で停めて、私の前まで歩いてくる。
つきあって1日目…のはずなのだけど。
隆太は私の手からスティックを取ると、ゴミ箱へ投げた。
「千香。おまえ、俺の彼女だよな?」
なんて言ってくれる。
嫉妬…らしい。
「隆太は私の彼氏なの?」
「彼氏っ。他の男としゃべんなっ」
隆太が声をかけてくれるわけでもないくせに。
他の女に抱きつかれているくせに。
けっこう横暴。
自分勝手。
「私はダメで、隆太はいいの?」
「…しゃべってない」
「スキンシップはいいの?」
「……ダメ。…ごめん」
隆太はどこか反省した顔を見せて、スティックを拾いにいって、私に返してくる。
わかんない。
ダメなの?いいの?
隆太は原田さんを突き放したりしないから、私も突き放さなくていいの?
そういう意味?
聞けない。
…聞きたくないから。
私はスティックを受け取って、教えてもらった16ビートを膝で叩いてみる。
リズム感ないかと思ったけどできてしまう。
隆太の手はスティックを握って、私の動きを止める。
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