Cage(Chika↓all)

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恋愛なのかなんなのかわからない。 一緒にいるとドキドキするし、ふれてくれるとうれしい。 だけど、私の目には、また隆太が原田さんにべったりくっつかれている姿が映る。 話していないとか言ったくせに話しているし、隆太の手は普通に原田さんの肩にふれたり、頭にふれたり。 なんでこんな嫉妬しなきゃいけないんだろうって思う。 私には声もかけてくれないし、視線がぶつかることも稀だ。 私は隆太の友達でもない。 彼女なんてもっと違うと思う。 「千香ちゃん」 名前を呼ばれて、半分膨れて顔を上げると、中学の頃の男友達が二人に増えていた。 どうやら私が以前よりちゃんと話すようになったから、また仲良くしようと寄ってきてくれているようだ。 「なんで名前で呼ぶの?いつから呼んでたっけ?」 隆太に呼ばれるようになって、男友達にファーストネームで呼ばれることを違和感もなく受け入れていた。 今更ながらに聞くと、笑ってごまかす。 一緒にいたスギも引き込むかのように、私の男友達はスギにも声をかけていく。 堅物の秀才…っぽくはあるけど、スギはかわいい。 男と話すの慣れていないって感じに素っ気ないけど、私の男友達も簡単に諦めたりしない。 「千香、ドラムの練習してる?次の休み、スタジオいって本物のドラム叩いてみる?」 「お金ないよ?」 「タダ。今日でもいく?」 私は毎日の隆太との放課後デートを考えて、頭を横に振った。 彼氏いるからとか、そんなふうには答えられなかった。 彼氏なのかわかんない。 私が一人で盛り上がっているだけのつきあいのように思う。 それでも…、私が一緒にいたい。 悔しいけど、私はあんな人でも好きなのだろう。 いくら男友達にふれられてもうれしくはないし、セクハラするなって振り払ってしまうから。 「じゃ、杉浦さんも一緒にカラオケでもいこ?たまには遊ぼ?」 スギを狙っているのが見え見えだ。 スギは私に判断を委ねるように見てくる。 「いかない」 私は答えてやった。 だけどその日、いつもの場所でどれだけ待っても隆太はこなくて。 私はぽつんと公園のベンチに座ったまま。 私は私の友達づきあいをしてもいいのかもしれない。 だけど…、会いたい。話したい人は一人だけ。
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